小金沢連嶺(大菩薩連嶺)  06.04.29-30

1日目
初狩駅(06:40)−藤沢コース−滝子山(10:30/10:45発)−大谷ヶ丸−ハマイバ丸−
大蔵高丸−湯ノ沢峠避難小屋(14:25)(泊)

2日目
避難小屋(05:20)−白谷丸−黒岳(06:55)−牛奥ノ雁ヶ腹摺山−小金沢山(08:50)−
石丸峠(10:25)−牛ノ寝通り−大ダワ(12:50)−「小菅の湯」(14:15)

1日目
小金沢連嶺、北は大菩薩嶺から南は滝子山まで連なる長大な山稜だ。数年前のエアリアには大きく小金沢連嶺と書かれていたが、今の山高地図には何も書かれておらず、 世間的にも大菩薩連嶺と言ったほうが話が通るようだ。 奥多摩の山々から眺める富士へ伸びる山の連なり、また、中央高速から見える壁の様に連なる稜線、ずっと、いつかは登ろうと思っていた。

滝子山から入り、大菩薩嶺を廻って牛ノ寝から下山する、3日間の計画で入山した。久しぶりの水含みで22kgの天泊装備。この時期でこの日数では軽量化を考えてない不真面目な重さだ。

藤沢の集落から眺める富士山 直前まで何度も見ていた天気予報では晴れだったが、初狩駅を降りてみれば空は暗い雲が覆っている。駅からは国道20号を渡り中央道をくぐって藤沢の集落から滝子山に進む。

何気なく後を振り返ってみたら、山あいに真っ白な富士山が大きく見えていたので驚いた。家に居ながらにして四季の富士が見られるとは羨ましいことだ。

林道に入って人家が無くなる頃ポツポツと咲いている花が目に入ってきた。定番のタチツボスミレ、チゴユリ、そしてずっとヒトリシズカが咲き続いている。

タチツボスミレ チゴユリ ヒトリシズカ
タチツボスミレ 立坪菫 チゴユリ 稚児百合 ヒトリシズカ 一人静

以前の長沢背稜でもあったことだが、花も撮るようになってからのこの時期の天泊縦走はやっかいなことがある。 春の花は背が低く、しゃがんで膝を突いて覗き込むように撮るので、すぐに足に疲れがきてしまうのだ。いい花を見つけた時など、ザックを降ろして時間をかけてしまうので、同行者がいたら呆れてしまうだろう。

ヤマブキ モミジイチゴ シュンラン
ヤマブキ 山吹 モミジイチゴ 紅葉苺
オレンジ色の実が付きます
シュンラン 春蘭

登山道 ニリンソウ イワボタン
しばらく沢沿いの登山道を進む ニリンソウ 二輪草 イワボタン 岩牡丹

早春の花々が好きになってからは、山吹を見ると春が過ぎ去ってしまった気分になっていたが、登るにつれ多種のスミレが山の斜面を飾っていた。この山はなかなかのスミレ山だ。

ナガバノスミレサイシン エイザンスミレ マルバスミレ
ナガバノスミレサイシン 長葉の菫細辛 エイザンスミレ 叡山菫 マルバスミレ 丸葉菫

最後の水場 アカネスミレ シロバナアケボノスミレ
最後の水場、と表示の沢 アカネスミレ 茜菫 シロバナアケボノスミレ

フイリヒナスミレ フイリヒナスミレ 斑入り雛菫

葉脈にそって斑と呼ばれる、まだら模様が入る株を”斑入り”と呼んでいる。ヒナスミレは斑が入りやすいスミレなのだが、この山のヒナスミレは斑がくっきり入ったものばかりだった。 ここまで綺麗な模様のものを見たことが無かったので、花を付けているものを探しながら標高を上げて行ってやっと会えた。

水場を過ぎてつづら折りの登山道を登っていくとひょっこり尾根に出る。まばらに立つ落葉樹林の明るい尾根から見えるピークに登るとまたピークが現れた。 そんなことを数度繰り返した。ニセピークに騙されるなんて久しぶりのことなのでなんだか楽しくなってきた。

尾根道 アケボノスミレ 桧平
尾根道 アケボノスミレ 曙菫 桧平

落葉樹林の下にはアケボノスミレが多い。茶色の落ち葉の間から咲いている赤味がかったピンク色が目立っている。

滝子山山頂 滝子山

三角点(1590m)から少し登ると、滝子山の標識(展望のある山頂:1620m)があり、初めての登山者に出会った。 秀麗富岳12景(大月市選定)らしいが、富士は裾野だけしか見えない曇天。しかし裾野だけで想像しても富士が立派に見える山だということが判る。 三ッ峠のアンテナが富士にかかって見える位置になるので少し残念な気がする。

小金沢連嶺南部 小金沢連嶺南部

滝子山から北に目をやると大菩薩嶺まで続く連続したピークが見える。ここから確認できるのは、左から大谷ヶ丸、ハマイバ丸、黒岳だ。

上空は薄日が射したかとおもえば暗い雲に覆われたりなどしていた。2つのロールパンを素早く食べて、展望の無い山頂には長居せずに先を急ぐ。 登山道を少し戻って水が湧く鎮西ヶ池(飲用不適)から尾根道を進む。道は細いがしっかり踏み跡はついているので歩きやすい。

登山道 大谷ヶ丸(おおやんがまる) エゾアオイスミレ
登山道 大谷ヶ丸 エゾアオイスミレ 蝦夷葵菫

滝子山を越えてからは、山中に花の姿がほとんど認められなくなった。登山者とすれ違うこともまれで、空色も手伝ってか寂しげに感じる道を淡々と歩いて行く。 ハマイバ丸は南面が開け展望地となっている。ここから大蔵高丸へはほぼ平坦な道となり、登山道の両脇にはロープが張られていた。時期になれば高山植物が咲くのだろう。

ハマイバ丸(破魔射場丸) 大蔵高丸 白谷丸方面
ハマイバ丸(破魔射場丸) 大蔵高丸 白谷丸方面

大蔵高丸から湯ノ沢峠への下りの道はぬかるみがすごかった。雨後であればかなりやっかいな道になる。途中には草原が広がり「湯ノ沢峠のお花畑」と書かれた新しい杭が立っている。 明日登る黒岳方面へは峠からガレの縁を登っていく登山道が見えた。一番高く見える樹木のピークの裏に白谷丸がある。

湯ノ沢峠避難小屋 小屋内部 電灯&きれいな布団 水場
湯ノ沢峠避難小屋 収容8名 小屋内部 電灯&きれいな布団 水場

湯ノ沢峠に降りて林道方面へ少し下ると避難小屋がある。外観は古くて小さい小屋だが、内部はきれいに使われていて、なんと蛍光灯の照明付だ(スイッチ入り切り可能)。 寝具も揃い(7〜8組)小屋を愛する方々がいるようで有り難いことだ。小屋の近くにはバイオトイレも出来たばかりで、感応式の明かりも付いている。往復3分の水場も冷たくおいしい湧き水が出ている。

湯ノ沢峠Pとバイオトイレ 湯ノ沢峠Pとバイオトイレ

小屋から見る位置関係。注意点としては、駐車場が近いのでとんどもない時間に車やバイクの音がするかも、また、小屋の収容人数が少ないので、泊まれない事も考えてテントも必須というところだ。 実際、この日も駐車場の隅に5張のテント村ができあがった。

お楽しみ時間 シュラフを広げ寝床を確保したらお楽しみ時間の始まり。背負ってきたビール1Lのツマミはソーセージやきそば。相性の良いコンビなのでビールもあっという間に無くなった。

夕飯はロールパン+きのこポタージュ。宿泊者は遅い時間に駆け込んできた登山者を入れて7人。最後に日本酒を1合ばかり飲んで早めに横になった。

2日目
結局雨も降ることなく、夜中は星空が見えていたと同宿の登山者が話していた。朝方の小屋の温度は4℃。水場に降りると霜柱が立っていたので外気は氷点下まで下がったようだ。

白谷丸から早朝の富士の眺め 白谷丸からの富士山

たっぷり寝たはずなのに休み休みの登りで、CTをオーバーして白谷丸に到着した。酒が効いたか?

朝方は煙っていた富士の方向も雲がとれて、霞んではいるがこの上ない展望が待っていた。

この南へ伸びる尾根を見下ろしながらの富士は、今回の旅を通して、幾つもある富士見の場所としては、小金沢連嶺一の眺めだと思う。

「山梨の森林100選」にもなっている広々とした広葉樹林の森(ぜひ秋に訪れたい)を抜けると、針葉樹に囲まれた黒岳山頂に到着する。

黒岳の広葉樹林 山梨の森100選 黒岳 1987.5m 川胡桃沢ノ頭
黒岳の広葉樹林 山梨の森100選 黒岳 1987.5m 川胡桃沢ノ頭

そのまま川胡桃沢ノ頭を通って、高度を下げていくと木々の間から明るい笹原が見えてくる。 賽の河原と呼ばれる笹原には、いかにも天場というようなスペースがあり、登山地図には水場往復30分ともあるので、今も張る人がいるのかもしれない。

牛奥ノ雁ヶ腹摺山も樹林の中ピークだが、展望地は南面になり、前記の賽の河原とセットで富士山を見ることになる。しかし今日は肉眼でしか富士の姿を確認できない霞み方になってしまった。

賽の河原から牛奥ノ雁ヶ腹摺山 賽の河原の天場 牛奥ノ雁ヶ腹摺山
賽の河原から牛奥ノ雁ヶ腹摺山 賽の河原の天場
水場へ下るような道もあった
牛奥ノ雁ヶ腹摺山

さらに明るい尾根道、笹道を進むと、いよいよ小金沢山だ。連嶺の名を頂いているわりには意外に小さなピークで、別名の「雨沢の頭」という方が合っている。 山頂から富士山は良く見え、秀麗富岳と言われるだけはある。

石丸峠へ降りていく途中でちらりと大菩薩嶺が見えた。今日は登山者や観光客で賑わっているだろうなと考えながら降りていく。

小金沢山 小金沢山から富士山方向を見る 大菩薩嶺
小金沢山 小金沢山から富士山方向を見る 大菩薩嶺

さて予定では、大菩薩嶺を廻って福ちゃん荘で天泊なのだが、なんとなく気乗りしなくなってきた。静けさが体に染み入る様な山歩きをしてきたので、今さら人ゴミに合流するのが嫌になってきた。 そんなことを考えながら進むと突然に視界が開け、明るい笹原が広がる狼平に出た。

狼平の笹原 狼平を進む私
左が熊沢山、右が1957ピーク

なんて開放的な風景なんだろう。大菩薩峠の近くにこんなに静かで心地良い場所があっただなんて驚きだ。脇へそれる細い踏み跡を辿ってみたら天場スペースもあった。
「狼平 いつか ここで会おう」と書かれた朽ちた道標が転がっていた。確かにそんな言葉が出てきそうな風景が広がっている。

1957ピークを越えて牛ノ寝通りの分岐のところで休憩する。パンをかじりながら登山地図を眺めるが、すでに赤線の混み合った大菩薩峠周辺へ行く意味も感じなくなってきていた。 下山予定地の「小菅の湯」のバス時間を見てみると、このまま下れば温泉に入れる丁度よい便がある。最高点の大菩薩嶺を廻らないことになるが、一度こういう気分になると湯上り後のビールしか頭に無くなる。 このまま静かに下る方の魅力が勝った、ということにするか。

狼平の幕営適地 狼平 1957ピークより 石丸峠
狼平の幕営適地 狼平 1957ピークより 石丸峠

一度、石丸峠に下りてから牛ノ寝の分岐に戻って下り始める。牛ノ寝通りは傾斜が小さいので歩きやすい上に、これまた静かで明るい尾根道が良い気分だ。整備された道を小気味よく下る。

牛ノ寝通りの明るい道 三角形の山は雁ヶ腹摺山 榧ノ尾山
牛ノ寝通りの明るい道 三角形の山は雁ヶ腹摺山 榧ノ尾山

高度を下げてくるにつれスミレも咲き出してきた。アケボノ、タチツボ、フモト、エイザンなどが道の両脇に咲いている。花で始まった今回の山旅は、やっぱり花で終わりそうだ。

ヒゲネワチガイソウ シロバナエンレイソウ アカフタチツボスミレ
ヒゲネワチガイソウ 髯根輪違草 シロバナエンレイソウ 白花延齢草 アカフタチツボスミレ 赤斑立坪菫

フキ フイリフモトスミレ ミツバツツジ
フキノトウ〜 咲いてても天ぷら〜 フイリフモトスミレ 斑入り麓菫 ミツバツツジ 三葉躑躅

2,3組の登山者とのすれ違いだけで、小菅村への分岐となる大ダワまで下りてきた。話に聞いていたイワウチワはどこに咲いているのか探しながら歩いていると、突然山の斜面の群生が目に飛び込んできた。

岩団扇 イワウチワ 岩団扇

小菅へ下っていくと右手の斜面にイワウチワがびっしりと咲く場所がある。けっして珍しい花ではないが、イワカガミほどは見ることが出来ない。

植生が杉や檜の植林帯になると下界が近い。小さな新しい作業小屋を過ぎると民家が見えてきた。畑を通り木製の小橋を渡り道標通りに道路を歩くと小菅の湯に到着。 イメージした場所では無く、いきなり温泉の真横に出たので驚いた。

バスの時間まで1時間ある。温泉にゆっくり浸かった後はビールを一気に飲み干す。この瞬間の為に山に行っているんだなぁ。 少し時間があることだしチューハイでも飲みながら、みやげ物館を物色しようと思って外に出たら、バスの運ちゃんが「もう出るよ!乗るんでしょ?」と声をかけてきた。 小菅の湯前からは奥多摩駅行き(西東京バス)に乗るつもりだったが、上野原駅行き(富士急山梨バス)もあるらしい。

下山口は小橋を渡って左の畑の奥 小菅の湯の正面から見て左側に出る バスの車内で乾杯!
登山口は小橋を渡って左の畑の奥 小菅の湯の正面から見て左側に出る バスの車内で乾杯!

上野原駅行きのバスに揺られながらでチューハイを開けて乾杯。でもすぐに無くなり酒が足りんなぁと思っていたらザックの中に日本酒が残っていることを思いだした。 酒まで飲みだす迷惑な客だったかもしれないが、登山者ばかりの車内で運転手も周りの山々の紹介や、坪山の登山口ですよとか、参考になる話をアナウンスしてくれていた。 上野原駅まで1時間40分の旅は、酔っていたのかあっという間に感じた。

このコースは逆方向をとる方ばかりでした。そりゃ進行方向に富士が見えた方が楽しいもの。時期的には秋が一番良いと思います。
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