朝日連峰縦走 (大朝日岳1870.3m / 以東岳1771.4m)  07.07.27-29
1日目 07/7/27(金)
大石橋P(小国町)  5:30
角樽小屋       6:20
蛇引清水       8:15  8:35発
平岩山       11:30 12:20発
大朝日岳      13:50 14:00発
大朝日小屋(幕営) 14:10 ※「大朝日岳山頂避難小屋」と掲げられていた
中途半端なままの仕事を先送りにして、逃げるように定時あがり。 家に帰り天気予報のチェックをするが、土日の予報は昼休みに見た時と同じで悪いままだ。 昨日確認した時は絶好の予報だったのに、と迷いながらも「初志貫徹!」と気合を入れる。

金曜の晴れマークだけに望みをかけ、初日さえ良ければ1泊で降りるも良しと、19kgになった天泊装備のザックを車に積んで出発した。

大石橋駐車場(約6台) 大石橋駐車場(約6台)

高速道路のパーキングで3時間眠り、今回の登山口となる山形県小国町の大石橋駐車ポイントへは朝5時過ぎに到着。 ここは林道の終点で、沢の流れの向こうには吊り橋(大石橋)が見えている。

前方の小さな小屋の中には入山届の用紙とポスト有り。 流行らない登山口と聞いていたが、しっかりと管理されているようでありがたい。

出発しようとしたら2人組の登山者が到着。少し話したところ地元の方らしく、 私のように遠方から来てここから登るのは珍しいらしい。「いっしょに登りましょうよ?」と親切に言って下さったが、 どうみても私の荷が重そうなので丁重にお断りした。

大石橋

「全面に板を渡してよ〜」と、言いたくなるところだが、豪雪地帯なのでこの様に必要最小限の板しか張っていないということだ。

歩み板の幅は25cmほどしかなく、中央部ではそれなりに揺れたが、大荷物でも問題なく渡れた。
大石橋

橋を渡り終えるとブナの森。朝日が射し始め、やさしい緑色の光があたりを包む。 緑濃い森に付けられた平坦な道をふらふらと進み、祝瓶山の分岐を過ぎると2本目の吊り橋だ。

祝瓶山の分岐 ブナが素晴らしい 2本目の吊り橋
祝瓶山の分岐 ブナが素晴らしい 2本目の吊り橋
歩み板は →こんな感じ

吊り橋を渡ると見事なブナの巨木の原生林に囲まれる。「わぁ・・」感嘆の吐息が漏れるほどに背を高く伸ばした幹は、上空で緑の屋根を広げている。 太古からの営みが何も変わらず続いているんだな、と立ち止まってしばし見とれた。

角楢小屋の直前にある吊り橋は、丸太1本をワイヤーで吊るしたもの。 自分の重心が高かったので、中央部で左右にぐるんと揺れた時は恐かった。増水していたら冷や汗ものだ。

角楢小屋は小さいが今も使われ、地元の方が整備しているということで内部はきれい。 釣り客も使用しているので、同宿になれば格別な夕げになるかもしれない。

背が高い見事なブナ 角楢小屋直前の吊り橋 角楢小屋
背が高い見事なブナ 角楢小屋直前の吊り橋 →拡大 角楢小屋 →内部

4本目となる大玉沢出合のこれまた細い1枚板の吊り橋を渡ると、沢沿いの平坦だったこれまでの道とはうって変わり、 息をつかせぬ急登になる。尾根の直上を忠実にひたすら登っていくと”蛇引の清水”の案内の文字。 登山道から水場への脇道を3分ほど下ると、岩の間から冷たくうまい水が湧き出している。

抜きつ抜かれつ歩いていた地元の方と水場で会うと「年々細くなるなぁ」と、寂しそうに語っていた。 水場の横には小型テントなら2張はいける台地があり、実際張られて使われているようだ。

大玉沢出合の吊り橋 急登です 蛇引清水の道標
大玉沢出合の吊り橋 急登です 蛇引清水の道標 →水場

水でぐっと重くなったザックを背負い、また急登の始まりだ。 樹林帯はやがて低木となり、見上げるとトンネルの出口のような白い空が見える。喜び勇んで登って行くと森林限界に出た。 周囲はガスの中で真っ白だが、空は明るく、汗をかいた体に涼風が気持ちいい。

樹林帯〜森林限界にかけての花たち

ツルリンドウ ツルアリドオシ ママコナ ヨツバヒヨドリ
ツルリンドウ
蔓竜胆 リンドウ科
ツルアリドオシ
蔓蟻通し アカネ科
ママコナ 飯子菜
ゴマノハグサ科
ヨツバヒヨドリ
四葉鵯 キク科

晴天ならば見晴らしが良いであろう登山道下の斜面には、ニッコウキスゲやキボウシが咲き、僅かにヒメサユリも混じっている。 時期がよければユリ科の楽園なのかな。

オトギリソウ ヒメサユリ シロバナハナニガナ コケモモ
オトギリソウ 弟切草
オトギリソウ科
ヒメサユリ
姫小百合 ユリ科
絶滅危惧IB類(EN)
シロバナハナニガナ
白花花苦菜 キク科
コケモモ
苔桃 ツツジ科

北大玉山のピーク 北大玉山のピーク

久々の天泊装備であの急登ではさすがに足にきて、休息も兼ねて北大玉山でおにぎりを食べて腹ごしらえ。 ガスの切れ間からは、周囲の谷に残る雪渓が見えていた。

大きく離されていた2人組にやっと追いついた。2人組は今日はここまでで、下山してくる仲間と落ち合うそうだ。 装備や年齢も対照的な2人に、ちょっと不思議に思いながらそのまま進む。

ぼんやりと次のピークが見え隠れする笹原の尾根を登っていくと、湿原に咲くような見慣れた花達が目に入るようになる。

エゾシオガマ ヤマハハコ ホソバノキソチドリ イワイチョウ
エゾシオガマ 蝦夷塩竈
ゴマノハグサ科
ヤマハハコ
山母子 キク科
ホソバノキソチドリ??
細葉の木曽千鳥 ラン科
イワイチョウ
岩銀杏 ミツガシワ科

キンコウカ ミヤマリンドウ ミヤマリンドウの白花 ミヤマウスユキソウ(ヒナウスユキソウ)
キンコウカ
金黄花・金光花 ユリ科
ミヤマリンドウ
深山竜胆 リンドウ科
ミヤマリンドウの白花 ミヤマウスユキソウ
(ヒナウスユキソウ)
深山薄雪草 キク科

平岩山

大朝日と平岩山の分岐へ到着したのは11:25。ザックを転がし羽が生えたように軽くなった体で平岩山山頂まで散歩。

周囲のガスもあがり、うっすらと見晴らしが利くようになった。 山頂付近には見頃を過ぎたミヤマウスユキソウ(ヒナウスユキソウ)がたくさん咲いていた。
平岩山

平岩山と大朝日岳の分岐で腰を下ろして大休止。こちらから見る大朝日岳は、アルプスの山のようにハイマツの中に白い道が続いていた。 1900mに満たない標高とは思えない山容に感心する。 大朝日山頂部のガスがなかなか取れず、それを口実に1時間近くも居座った。

大朝日岳 平岩山方面から 西朝日岳
大朝日岳 平岩山方面から 西朝日岳

深山薄雪草が咲き乱れる気持ちのいい登山道を1人占めにして歩く。風に揺れる白山一華と残雪の山の風景もまたいい。

左奥のピークが平岩山 斜面には深山薄雪草がたくさんだ
左奥のピークが平岩山 斜面には深山薄雪草がたくさんだ

最後のザレた斜面を登りきると大朝日岳山頂。山頂の登山者達に「道だと思っていなかった場所から人が登って来た」と驚かれた。 ガスに巻かれ、来た道もまったく見えないので、山頂はすぐに切り上げて下り始めるとする。

山頂にて 大朝日岳山頂部です 下り始めるとすぐに小屋だ
山頂にて 大朝日岳山頂部です 下り始めるとすぐに小屋だ

登山道では1年ぶりの再開となる高山の花たち。

タカネマツムシソウ ミヤマシャジン ヨツバシオガマ チシマギキョウ
タカネマツムシソウ
高嶺松虫草
マツムシソウ科
ミヤマシャジン
深山沙蔘 キキョウ科
ヨツバシオガマ
四葉塩竈
ゴマノハグサ科
チシマギキョウ
千島桔梗 キキョウ科

大朝日岳山頂避難小屋へは14:10着。小屋前にはガスが流れ、目の前の中岳が大きい。 中岳斜面の残雪や小屋周辺の花たち、そしてこのガスを運んでいる風を肌で感じていると(やっぱり来て良かった)と、 パッとしない天気で少し沈んでいた気持ちがいつの間にか和らいだ。

中岳。中央奥は西朝日岳。 小屋前にて 小朝日岳。 小屋前にて
中岳。中央奥は西朝日岳。 小屋前にて 小朝日岳。 小屋前にて

さて、満員の小屋泊は嫌なので金曜から入ったのだが、小屋番さん曰く「せっかく背負ってきたんだから張ってもいいよ」とのこと。 登山地図では天場表示は無いが、小屋の脇にはどう見ても天場というような台地がぽっかりと空いている。

張っちゃった 張りました

どういう経緯か分からないが、小屋が混雑している時は、テント持ちは張らせてもらえるらしい。 トイレも小屋を使用するので、管理費的な幕営料が500円。

もちろん、天場の件は無いものと考えて、小屋利用(素泊まり寝具無し:1500円)が基本です。

テントを設営していると小屋の2階の窓から「ほれ、おにぎり食えー」と声をかけられた。 見ると、おじいちゃんが身を乗り出して、おにぎりの包みを差し出していた。 「食料はたっぷりあるのでいいですー」とお断りしたが、「若いんだから、おめぇ、食えー」だそうだ。 テントの件で話していた小屋番さんが、それを天場の私のところまで持って来て下さった。 差し出した主は、この小屋の名物小屋番さんだそうで、お歳が82,3になるのに今でも自分の足で登ってきているというから驚きだ。

いただき物

おにぎりとおかずは、麓の温泉宿で作られ小屋番さんの為にと運ばれてきたものだった。 確かに小屋番さんよりは若いわな、と笑いながら有り難く頂戴した。 ご飯は釜で炊かれているということで、ふっくらと美味しく、川魚の佃煮や漬物など、今日の酒のつまみは思いかけず豪華になった。
いただき物

まだガスは多かったが、夕方になって沈むことを祈って、ビール、チューハイ、日本酒と、背負ってきた酒を飲み続けた。 小屋から10分ほど下りる金玉水は水量十分の冷たい水。金玉水の付近も幕営跡があるが(もちろん幕営禁止)、 小屋からまる見えなので、この日も実際に張っていた登山者は小屋の方へ移動させられていた。

金玉水は前方に見える中岳の雪田の中腹にある ピートの中から流れる金玉水 大朝日岳とキスゲ
金玉水は前方に見える中岳の雪田の中腹にある ピートの中から流れる金玉水 大朝日岳とキスゲ

稜線と水場に咲く花たち

ハクサンフウロ クルマユリ コバイケイ ヒナザクラ
ハクサンフウロ
白山風露 フウロソウ科
クルマユリ
車百合 ユリ科
コバイケイ
小梅宦@ユリ科
ヒナザクラ
雛桜 サクラソウ科

日が傾いてくる頃にまた山頂へ上がった。ほめられたもんじゃないが、酒を飲んだ後に周辺をふらふらするのがまた楽しい。 風は強かったが、同じく日の入りを待つ単独行の天泊者と話しているうちに、さーっとガスが下がっていった。

大朝日岳から北方稜線。中央奥には以東岳。 今日の尾根も見えた。中央奥が祝瓶山。
大朝日岳から北方稜線。中央奥には以東岳。 今日の尾根も見えた。中央奥が祝瓶山。

あぁ、素晴らしい。だから山に来るんだな。

今日歩いてきた尾根も姿を現してくれた。西朝日の左に沈む夕日に照らされ、遠く壁のように立ちはだかる以東岳が輝いている。 明日はあれを越えて大鳥池でタキタロウを見るのだ。

落日

私は朝日より夕日が好きだな。少し酒に酔って過ごすこの時間は、身も心も次第に山に溶け込んで行くようで、ただただ気持ちがいい。
2日目ヘ