谷川連峰馬蹄形から平標山 06.11.03-04

1日目
土合橋P(05:40)−笠ヶ岳(08:35/50)−朝日岳(09:50/10:05)−清水峠(11:35/55)−
蓬峠(13:25/35)−茂倉岳(16:00/10)−茂倉岳避難小屋(泊)(16:20)
標準CT合計:12時間35分

(いつか必ず)と、谷川岳と見聞きする度に想いを馳せていた谷川連峰馬蹄形コース。
まだ山登りを始めて間もない頃、谷川岳の西黒尾根から眺めた対面の山々がやけに高く見え、買ったばかりのエアリアで白毛門・朝日岳という山名を知り、この道を周遊したらどんなに爽快だろうかと思った。 また、そんなことを思っていると、平標山と谷川岳をまっすぐに繋ぐ長い尾根も目に入り、馬蹄形の次はここを歩いてやろうと考えていたが、 マイカーで行くと車回収に手間取るし幕営禁止エリアでもあったので、今まで実際に計画を立てるに至っていなかった。

谷川連峰馬蹄形コース概念図

三連休の初日、午前2時に車で自宅を出た。土合橋のバス停で右に折れ上がるとすぐに大きな駐車場に着く。
登山口の表示がなかったので、ここか?と少し不安でそのまま進んでみると、山の友人のブログに載っていた馬蹄形コースの表示板が車のライトに浮かびあがったので一安心。
谷川連峰馬蹄形コース概念図

05:35。まだヘッドランプが必要だが空が白み始めていたので出発した。今回は避難小屋泊装備で15.5kg。 6本爪アイゼンや防寒装備など、水3.5Lを含んでの重さなので、この時期としては抑えた方だろう。

今日の登山地図上のCTの合計は12時間30分。積極的に飛ばしていかなければ明るいうちに茂倉岳まで到達できないので、白毛門への急登は普段日帰り山行でも出さないようなスピードで登っていく。 樹林帯といえど尾根上なので木々の間からは朝日に染まる谷川岳が美しい。とにかく水を飲むことも惜しむように(水場が出ているか心配だったのも確かだが)一気に駆け上がると、 ジジ岩・ババ岩の白い巨石がシンボルの白毛門が姿を現した。

朝日に染まる白毛門へ続く尾根 染まる谷川岳 松ノ木沢の頭から見上げる白毛門
朝日に染まる白毛門へ続く尾根 染まる谷川岳 松ノ木沢の頭から見上げる白毛門

白毛門直下から見た谷川岳は朝焼けから昼間の顔に変わっていた。これが2000mに満たない山とは、山の格は高さだけではないと言わんばかりの姿を見せている。

谷川岳。白毛門直下から 染まる谷川岳
谷川岳。白毛門直下から 左:笠ヶ岳。朝日岳は右の烏帽子の裏なので見えない

いいペースできている。これは午後3時ぐらいに今日の行程は終えられるかも?と、期待しながら白毛門の次に立ちはだかる笠ヶ岳の笹原の道を登る。 笠ヶ岳は白毛門より見晴らしがいい。清水峠や蓬峠の小屋も見え、馬蹄形をぐるっと見渡すことができる。しかし展望は最高なのだが、ふくらはぎがプルプルと震えているのがわかる。 最初の休憩としておにぎりを食べたが、1つをやっと食べただけで胃が重くなった。ペースが速すぎたことが原因だが今日は仕方がない。

笠ヶ岳の登り 笠ヶ岳山頂。日帰りでもここまで来るのがオススメ 連なる烏帽子を越え左に見えるなだらかな朝日岳
笠ヶ岳の登り 笠ヶ岳山頂。日帰りでもここまで来るのがオススメ 連なる烏帽子を越え左に見えるなだらかな朝日岳。笠ヶ岳避難小屋前から

笠ヶ岳からは朝日岳が意外に遠く見える。鞍部に降りると山頂からも見えていた笠ヶ岳避難小屋がある。 内部はきれいで小さな銀マットが敷いてあり、4,5人なら寝られそうな広さだ。

ここからは骨休めを兼ねてゆっくりと朝日岳に進む。大烏帽子を越えると朝日岳の大きな山体が全容を現した。

朝日岳 なだらかな朝日岳の姿

白毛門、笠ヶ岳、朝日岳と、次々と美しい山が姿を現すこの縦走路は快感を覚える。まして振り向けば谷川岳の絶壁だ。

左奥に霞むは巻機山。朝日岳から巻機山は尾根が繋がっていて残雪期のバリエーションルートだ。ここを歩けるような技術と経験を身に付けたい。

朝日岳ではお地蔵さんが迎えてくれた。東の山なみに目をやると、平ヶ岳、燧ヶ岳、至仏山、日光白根山、武尊山といった名だたる山々が雲一つ無く眺められ、 この山頂部には高層湿原が広がり池塘は空を映して青く散らばっている。

今日の目的地の茂倉岳が対面に見えている。とんでもなく遠く感じる、いやまだ半分も来ていないのだから約7時間(順調に行けばだが)のCTが残っているので実際に遠い。本当に着けるのか?顔が半笑いになってきた。

中央に見えるのが茂倉岳 高層湿原の木道を行く。前方はジャンクションピーク 松ノ木沢の頭から見上げる白毛門
朝日岳山頂。中央に見えるのが茂倉岳。あんなとこまで行くの?ほんと?
※画像クリック
高層湿原の木道を行く。前方はジャンクションピーク 池塘が散らばる枯れた湿原と遠望の尾瀬の山

清水峠への長い降り

食欲もないのでチョコを3,4粒食べただけで出発した。ジャンクションピークの巻機山への道標を越えると清水峠への長い降りが始まった。 足の踏ん張りが弱くなって何度もこけそうになるし、これが11月の気候か?と思うほど陽射しが強いしで、バテバテになってやっとの思いで清水峠へ到着した。
清水峠への降り

さてどうしたものか。バテバテの理由に水をケチケチ飲んでいるのも一因かなと思い、避難小屋の水が出ているだろうと決めこんでゴクゴク飲んでやった。 おにぎりを食べて送電線監視所脇のコンクリに寝転んで足を伸ばす。はぁ、気持ちいい。体中に水が染み込んでいくようだ。

本日一番長い休憩をとった後の登りは調子がいい。軽い脱水症状だったのかも?そう思うと、もう水を抑える気持ちなどまったく無くなって、飲みたいだけ飲むことにした。 この調子で飲んでも小屋までは1Lは残る。小屋で水が出ていなかったら馬蹄形のみとし、明日は土合へ降りればいい。

清水峠 左:送電線監視所(一般者立入禁止。施錠済) 右の小さい建物が白崩避難小屋 白崩避難小屋 この山域ではいい方の避難小屋です 大源太山 七ツ小屋山への登りにて
清水峠 左:送電線監視所(一般者立入禁止。施錠済) 右の小さい建物が白崩避難小屋 白崩避難小屋 この山域ではいい方の避難小屋です 大源太山 七ツ小屋山への登りにて

右手に鋭鋒の大源太山を見ながら七ツ小屋山へ登って行くと、本日初めて出会う登山者が休んでいた。7時間もの間この展望の中を1人で歩いていたことに今さらながら驚く。

七ツ小屋山からは、茂倉岳が笹原の向こうに遥か遠く逆光で霞んでいた。CT残り4時間。現在12:45ということを考えると気が遠くなる。

中央に最も高く霞むのが茂倉岳 数時間前に歩いていた峰々
中央に最も高く霞むのが茂倉岳 数時間前に歩いていた峰々。中央の鞍部から右に、朝日岳、笠ヶ岳、右奥に白毛門

緩やかな尾根は笹原がさざなみのようにうねり、サラサラとした音が心地良く感じる。冬期閉鎖された蓬ヒュッテの前で3つめのおにぎりを食べて武能岳へ登る。

蓬ヒュッテと蓬峠 蓬ヒュッテの天場。眼前には朝日岳。下地が少し湿っぽい 武能岳(ぶのうだけ)から茂倉岳を見る
蓬ヒュッテ(小屋閉め済)と蓬峠 蓬ヒュッテの天場。眼前には朝日岳。下地が少し湿っぽい 武能岳(ぶのうだけ)から茂倉岳を見る

武能岳から少し降りて茂倉岳へ登っていると後から声が聞こえてきた。「ん?誰も歩いていないはずだったが?」と待ってみていると、3人のトレイルランナーが近付いてきた。 馬蹄形の日帰りだと思うが、今頃ここではロープーウェイに間に合うのか?西黒尾根を暗い中降るのだろうか?

茂倉岳に上がると谷川岳へ伸びる稜線が夕日に照らされていた。山頂で景色を眺めていた登山者から「お疲れ様」と声をかけられた。荒い息がなかなか治まらず、だいぶ疲れているように見えたのだろう。 避難小屋からきていた登山者から水は出ていると聞き安心し、最後1人になるまで今日歩いた道を眺めていた。

一ノ倉岳からオキの耳。トマの耳に伸びる稜線 武能岳、七ツ小屋山方面を見る
一ノ倉岳からオキの耳・トマの耳に伸びる稜線 武能岳、七ツ小屋山方面を見る

苗場山方面に日が沈む

この山旅は山中泊では初めて一眼レフを持たないできた。ポジフィルムで稜線を染める夕景を撮ったなら、きっと良い発色をしていたろう。

軽量化と行動時間短縮の為にカメラは置いてきたのだが、いつもならファインダーに囚われていたこの目に、雄大な山稜の姿を色濃く焼き付けることができた気がする。
苗場山方面に日が沈む

避難小屋へは茂倉岳から10分下りる。今日の宿泊者は私を含め、単独×6、2人1組の計8名だった。単独率が多いのがこの避難小屋らしいのか? 小屋の内部は広く(地図では20名とある)、トイレも併設されている。また、水場が往復5分なので谷川連峰の中で一番良い条件の避難小屋だと思う。

水場では冷たくおいしい水が笹原の下から湧き出ていた。夕食はラーメンと余ったおにぎり。夕食後は1本しかないビールをちびちび飲んで過ごす。

水場。ご覧のとおり細い。秋口でも枯れなそうに思える 茂倉岳避難小屋。左はトイレ棟 今宵のメニュー
水場。ご覧のとおり細いが秋口でも枯れなそうに思える 茂倉岳避難小屋。左はトイレ棟 今宵のメニュー

2人組の宿泊者でウクレレを持ってきている人がいた。皆が夕食を終える頃、小屋の玄関で月夜のライブが始まった。私にはよく判らないがプロ級の上手さ。 かじかむ指でこんなに弾けるとは驚いた。しかしなぜ避難小屋でウクレレなのか??まあ、謎もあったがいいものを聴かせてもらった。

月夜のライブ 月夜のライブ

ランタンを置いてウクレレを弾く演奏者の周りを3,4人の観客が囲む。
ウクレレの音質は疲れを癒し、皆の気持ちを和やかにしてくれた。

こんな山の1日の終わり方もいいな、と思った。


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