白峰南嶺・蝙蝠岳縦走    2013/08/10 - 08/13
1日目:奈良田湖P−黒河内岳(笹山南峰)−白河内岳幕営適地(天泊)
2日目:白河内岳−広河内岳−農鳥岳−間ノ岳水平道−熊ノ平小屋(天泊)
3日目熊ノ平小屋−塩見岳−蝙蝠岳−二軒小屋ロッジ(天泊)
4日目:二軒小屋ロッジ−伝付峠−奈良田越−黒河内岳(笹山南峰−北峰)−奈良田湖P

3日目 2013/08/12

 熊ノ平小屋         3:45
 北俣岳分岐         8:00
 塩見岳           8:25
 北俣岳分岐         8:55
 蝙蝠岳          10:45
 徳右衛門岳        12:25
 二軒小屋ロッジ(天泊)  15:50

夜中はマットから体が滑って何度も目が覚めた。確かに傾斜が付いた天場だったけれど、マットとシュラフが滑りやすい相性だったらしい。

朝食の用意を持って小屋の前へ。まだ2時半だがパッキングを済ませたテント装備の2人が靴紐を結んでいる。同じ様な行程なのかが気になって「早いですね、どちらまでですか?」と聞くと三伏峠までとのこと。「足が遅いもので」と付け加えながら笑って答えてくれた。

他にも出発の準備をしている人がちらほら。やっぱり南アは早出の人が多いな。

朝食はお茶漬け。

夕食時に作っていたアルファ米の半分を使用。

山では2食用のアルファ米が私の基本食料。意外と見かけないけどなんでだ?
朝食はお茶漬け。

オリオン座と農鳥岳。 オリオン座と農鳥岳。

出発は3:45。今日の行程の長さで言えばやや遅れたか。時刻の記録用に適当に撮っているコンデジには、農鳥岳の上に輝くオリオン座が写っていた。

満点の星空と流星は今日も同じ。ただ、進行方向だけ星が見えずのっぺりとした黒い夜空に見える。水は4Lで出発。二軒小屋ロッジまでたどりつけなくても途中の徳右衛門岳に水場があるし、その水場で取得できなかったり途中で張ることも考えての必要最低量とした。

ヘッドランプの明かりに浮かぶ道を確認しながら暗闇の森を進む。前方の小山にはちかちかと動く光があり、同じ時間に出た登山者もいるようだ。まったく冴えない阿部荒倉岳のピークに寄った後、しばらく歩いていると森の様子が判るようになり、ヘッドランプを手に持ち変えて休憩ポイントを探しながら進んだ。

露岩に出たところでザックを下ろして休憩。

今日が山行のハイライトと位置付けていたのに周囲はガスで真っ白だ。
露岩で休憩

実は今日の行程をまだ迷っている。計画では塩見岳には寄らずで13時間のCT、寄ったら14時間超えだ。天気に任せて北荒川岳山頂の展望で決めようか。左手の眼下には白峰南嶺の山麓が見え隠れ。ここだけにガスが覆いかぶさっていることを願って歩き始める。

よみがえった記憶。 よみがえった記憶。

ふと見憶えがある気がして立ち止まった。

ああ、9年前の縦走の時、疲れ果てて歩けなくなってテントを張った場所だ、懐かしい。

あの頃はまだ縦走力が無く長時間の行動に弱かった。それなのに軽量化に不真面目で無駄に重いザックだったっけ。この後、低木帯のトンネルで夜露に濡れてぐっしょりになったことも思い出し、ザックカバーだけを付けて歩き出した。

バイケイソウの原 北荒川岳へ
バイケイソウの原 北荒川岳へ

バイケイソウの原を抜けて北荒川岳直下の低木帯まで登ると、ガスから抜け出し上空はぱーっと青空が広がった。荒い息のまま一気に登り抜けると切れ落ちた対面に見事な展望が広がった。

塩見岳 北荒川岳より。
塩見岳 北荒川岳より。声を出して息を一気に吐き出し、朝の清涼な空気を思いっきり吸った。

ザックを転がして大休止。先に休んでいた熊ノ平からの登山者と、この良き日を喜び合ってから周囲をぐるっと眺めた。塩見岳へ続く稜線にはポツリポツリと人影が確認できる。歩いてきた道を眺めると間ノ岳まで繋がる仙塩尾根が、朝もやの中に緑野の尾根になって美しく続いている。

仙塩尾根と、左のピークが間ノ岳、中央が農鳥岳。
仙塩尾根と、左のピークが間ノ岳、中央が農鳥岳。

さて、目を戻せば格好いい塩見岳。もうこれは塩見岳に寄るしかない。思えば今回の行程、塩見岳の展望コースでもあるし、この山を中心にして歩いている様なものだ。たかだか分岐から往復1時間弱ではないか。今日の天気で寄らないなんて山の神様のバチが当る。

タカネビランジ 高嶺ビランジ

北荒川岳から歩き出すと南アルプス特産のこの花が登山道の砂礫に頑張って咲いている。
タカネビランジ 高嶺ビランジ ナデシコ科

マルバタケブキの花畑。
マルバタケブキの花畑。

道は砂礫の稜線から東側に下がりマルバタケブキの斜面を行く。随分前のことなのにこの風景もはっきりと憶えていた。そしてまた稜線に戻ると塩見への急登が始まる。

塩見岳。
塩見岳。左に斑に剥げている斜面が雪投沢。

まだ使用している2002年度版の南アルプス北部の登山地図では、キャンプ指定地になっているが今は幕営禁止になっている。先ほど通り抜けてきた北荒川岳の幕営ポイントも同様に禁止だ。話によると水場の汚染が原因らしく、管理されていないとこうなってしまうのか。一度は雪投沢に張ってみたかったのだが。

塩見岳山頂へ。
塩見岳山頂へ。

北俣岳と塩見岳の分岐にザックをデポして空身で塩見を往復。塩見の記憶は山頂の高度感と天狗岩側のガラ場のイメージが強く、ハイマツを縫って登ったこちら側の記憶はすっかり抜け落ちていた。

塩見岳 東峰 3052m
塩見岳 東峰 3052m

山頂標識の右には北俣岳まで続く稜線、左には北荒川岳の崩壊部が見える。奥には間ノ岳と農鳥岳。もう、あんなに遠くなった。

悪沢岳と荒川岳。
悪沢岳と荒川岳。

南ア核心部の山が目前に大きい。ふと足元の北俣尾根が目に入り道が付いているように見える。そういえば、昨日、小屋のデッキで隣り合った方が、大井川西俣から塩見に直登するこのコースもいいらしいよ、と話していたのを思い出した。

登山地図に道は無いが実際に見てしまったら興味が沸く。が、そんな登山をする日はたぶん来ないだろう。

西峰 東峰より ミヤママンネングサ 深山万年草 ベンケイソウ科
西峰 東峰より
高度感ある吊尾根です。
ミヤママンネングサ 深山万年草
ベンケイソウ科

西峰を往復してからそそくさと下山開始。塩見界隈に人は少なかった。山人気で登山者が増えているとはいえ、南アは交通の便を考えると北部ばかりに集中していることを感じる。

北俣岳へ。。
北俣岳へ。これは塩見からの下山途中。
中央の黒い岩峰が登山地図に危険マークで記載のポイントで、右のなだらかなピークが北俣岳になる。

分岐にて。 分岐にある天場ポイント。
分岐にて。あの黒い岩場が危険マークの箇所。 分岐にある天場ポイント。いかにもな場所が分岐の東側にあります。

分岐では今日初めての行動食。もう5時間も動いているのに食欲は全く無い。なんとか食べられそうな物はやっぱりドライフルーツ。5,6粒ほどよく噛んで飲み込んだ。

岩場は1,2箇所悪いがどこにでもあるような道。ただ、ここを通過する人は大きなザックのはずなので、荷物のひっかけに注意が必要だ。

塩見岳 北俣岳より。
塩見岳 北俣岳より。

こちらから見る塩見岳は新鮮だ。平和なザレた台地になったので一息つく。さあ、いよいよ蝙蝠岳(こうもりだけ)への道が始まるぞ。

蝙蝠岳へ。
蝙蝠岳へ。

おおらかな広い尾根が蝙蝠岳へ続く。するといきなり登山者が登ってきた。今日は二軒小屋ロッジからだそうで、いい足をしてらっしゃる。

だだっ広い岩礫の道だ。濃霧になると迷い易いというのも頷ける。
だだっ広い岩礫の道になる。濃霧になると迷い易いというのも頷ける。

塩見岳方面
塩見岳方面を見る。全く印象が違う山になってきた。初めての道はやっぱり面白い。

道は一旦樹林帯の鞍部に下り、ハイマツにザックをひっかけながら登り返して進んでいくと、平坦地に乗っかり前方に小山状の山頂が見えてきた。

蝙蝠岳山頂へ。
蝙蝠岳山頂へ。

蝙蝠岳 2864.7m 蝙蝠岳 2864.7m
到着は10:45。気分爽快。

南ア主稜線と白峰南嶺に挟まれて、とても山深く、山に溶け込んだ様に感じる場所だ。

道標には二軒小屋ロッジまで「6時間」と書いてある。時計を見ると11時を回っていた。疲れていると僅かな休憩のつもりでも時間が過ぎるのが早い。まだ先は長いがひたすら下るだけだし、水だけでも足は動くだろう。

山頂までは6,7人のすれ違い。天泊装備の単独行ばかりだったが、軽装の2人が蝙蝠の肩で休んでいた。三伏峠側からのピストンかな。

山頂の東側に2張り分の幕営適地あり。

ステキ過ぎる立地です。
山頂の東側に2張り分の幕営適地あり。

山頂から徳右衛門岳方面を見る。 蝙蝠岳 森林下降点より。
山頂から徳右衛門岳方面を見る。
中央右の禿げているあたりが下降点、森林限界だ。この間はガレの道が続くのだが、晴天なのに踏み跡というものが見つけられない。これは濃霧時、特に下りが危険だ。
蝙蝠岳 下降点より。
見納めです。

白峰南嶺 下降点より。
白峰南嶺 下降点より。
中央が初日に張った白河内岳。右が笹山。明日は笹山まで登り返して奈良田湖下山。なんだ、もう山行が終わるのか。

下降点から先は樹林帯の細い道が続く。しばらくして重そうな装備の単独行者とすれ違った。今日の蝙蝠尾根では誰にも会わないかも?と思っていたのでこれだけ会うと拍子抜け。

でも、蝙蝠岳を登る理由は皆それぞれだろうが、疲れきっているのに笑顔がすぐ出るのは、山が好きで仕様がない人ばかりなのは間違いない。

シラビソの森 徳右衛門岳 12:25着。
シラビソの森 徳右衛門岳 12:25着。

山頂で休憩。道標には二軒小屋ロッジまで4時間とある。CTと照らし合わせてみると少しは短縮しているので気分的に疲れが和らぐ。山頂前後に幕営適地が2,3ある。

徳右衛門岳直下の水場の入口 徳右衛門岳直下の水場の入口
水場は寄らず。

参考で下記に二軒小屋ロッジに掲示されていた案内図を載せます。
参考;二間小屋ロッジに掲示されていた案内図

水場入口を過ぎて大下りが終わると林床が苔むした美しい森に変わる。細い登山道が森の中を刻んで伸び、静けさが心地よい歩みだ。苔の中には夏の終わりを告げるキノコがちらほら。

苔むした緑の森。
苔むした緑の森。

コテングダケかな? タマゴダケ。
コテングダケかな?だったら毒キノコ。また秋のきのこが始まった。 タマゴダケ。
最初は栗?かと思ったけどよく見ると白い袋を破って出たてのタマゴダケでした。テングダケの仲間では非常に優秀な食菌で美味しいらしい。

苔の道です。
苔の道です。

苔の散歩道に疲れも忘れ歩いていたら、また急降下の道になり足裏が痛みだした。登山地図の「階段3基」を目指して我慢の歩きを続けていると白い施設が左手に現れた。

中部電力の施設らしい。 まだまだ険しい。
中部電力の施設らしい。けっこう急な階段です。 登山道に戻ると険しい道です。

そしてここからの急降下が本日一番きつい区間になった。めいいっぱいストックを伸ばして、体重をかかり気味にして降りていく。沢音が聞こえてからも長かったが、川の流れが見えたときはほっとして気が抜けた。

林道に出た〜! 林道歩きが天国の様。
林道に出た〜!
私はここから取付きたくないですね〜
林道歩きが天国の様。

頼りない道標通りに進みトンネルを抜けて、左手にエメラルドグリーンに輝くダム湖を越えると「二軒小屋ヒュッテ→」の案内板。樹林の小道をちょっと登って、あの芝生が広がる極上のテント場に飛び出した。

やっと着いたよ〜〜。

林間の二軒小屋ヒュッテと天場(キャンプ場)
林間の二軒小屋ヒュッテと天場(キャンプ場)

天場には先客1人。もう一つ空いている方のテーブルに荷物を置いて、早速サンダルに履き替える。なんて気持ちがいいんだい。靴下を干してからヒュッテ2階の受付へ。足裏が痛すぎてへんてこな歩き方だ。

ヒュッテの表には自動販売機があり値段は下界の設定になっている。激安セールに感じてしまうのでご注意を。カロリーを欲している体に250円のチューハイを一気に流し込む。ふわぁ〜、甘露、甘露!

テントとテーブル占有の図。 テントとテーブル占有の図。

なんて気持ちいい天場なんだろうか。


日が山の向こうに隠れたので、干し物を片付けながらふと乾いた靴下の匂いをかいでみる。あれ?ぜんぜん臭くないぞ?靴の方は?と試してみると中々の臭気。今回行程が長いので厚手のウールの靴下にしたのが正解だった。

先に天場に居た方と立ち話をしたところ、なんと、始点・終点・コースが全く同じで逆回りで来た人だった。さすがに驚いて声を上げた。なんとマニアなすれ違いだろうか。その方は、昨日は笹山直下で張り、今日は白峰南嶺→奈良田越→伝付峠を越えてこの天場に着いたそうだ。そしてあと3日かけて奈良田湖へ戻るらしい。

これまでのルート情報を聞くとやはり笹山以南の白峰南嶺が厳しく、何度か迷って戻るを繰り返し傷だらけの腕を見せてくれた。迷ったら道を戻って目印(ピンクテープ)が有る箇所からやり直したほうが良いとのアドバイス。ほんとにこんなところ行くの?的な道もあったとこのと。踏み跡が薄いコースは、下りと上りでは格段に難易度が違う。この区間を上りに取ってよかった。

夕飯はラーメンとイナバのツナカレー 夕飯はラーメンとイナバのツナカレー

夕食用のアルファ米にお湯を入れてから設営を終え、今度はビールを飲んでいたら途端に腹が減ってきた。ビールが漢方薬の如し。

今回のツナカレーはレッド缶。このシリーズ、旨さとコストが両立してます。

天場には大井川の沢音が絶えず響いている。その為か夕食後のヒュッテから漏れてくる笑い声もさして気にならず、辺りが暗くなってもテーブルで飲みながらまどろむ時間は心地よいものだった。


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