奥秩父主脈縦走    2012/04/28 - 05/02
1日目:奥多摩駅−六ッ石山−鷹ノ巣山避難小屋−七ッ石山−奥多摩小屋(天泊)
2日目:奥多摩小屋−雲取山−飛龍山−山ノ神土−水干−笠取小屋(天泊)
3日目:笠取小屋−雁峠−古礼山−水晶山−雁坂峠−雁坂嶺−破風山−木賊山−甲武信小屋(天泊)
4日目:甲武信小屋−甲武信ヶ岳−国師ノタル−国師ヶ岳−北奥千丈岳−大弛小屋(小屋泊)
5日目大弛小屋−朝日岳−金峰山−富士見平小屋−瑞牆山荘

5日目 05/02

 大弛小屋           5:08
 朝日岳            6:51
 金峰山            8:27 休憩15分
 大日小屋          10:40 休憩10分
 富士見平小屋        11:20 12:05出発
 瑞牆山荘          12:30

最終日。食糧も休みもまだ十分あるが今日中に降りてしまいたい、そんな気持ちが強かった。

朝食はワンタンメン。これとチキンラーメンだけは好みが続いている。山仲間の中でも山中の食事には気を使わない方で、その代わりと言っちゃなんだけど酒には真面目。

朝になっても豪雨との予報は変わらず。2人組は国師越えを諦め、また、朝日・金峰の雪越えの戻りも嫌って林道で下山するそうだ。

大弛小屋、出発 大弛小屋、出発。

外は小雨。踏み抜きが心配だなあと思いながら、気温が低いうちに小屋を出発した。

小屋番さん、いい時間でした、ありがとう。

大弛峠 朝日峠
大弛峠。 朝日峠。

雪道に残るトレースを忠実に行く。幸い踏み抜きは少なく歩みは遅くない。左足首は相変わらず痛いが一晩休めたおかげで我慢できる程度になった。

朝日岳手前のガレ場 朝日岳
朝日岳手前のガレ場。 朝日岳。

朝日を過ぎて更に雪道をせっせと行くと、やがて森林限界になり金峰稜線への登りになる。途端に吹きっさらしになって風と小雨とでホワイトアウトになった。

雪面と空との境目が分らず消えかかったトレースを拾って稜線まで登る。

鉄山のトラバースから稜線へ。真っ白だ。 稜線の景色。
鉄山のトラバースから稜線へ。真っ白だ。
ここの下山で2人組はルート外に降りてしまい、数時間迷ったとのことだ。逆コースの悪天時は要注意。
稜線の景色。

横殴りの風によろけながら行くとガスの中に黒い塊が現れ、近付いたらそれが山頂の岩稜だった。

金峰山。2595m。奥秩父の盟主です。 五丈石。遠くからも分かる金峰山のシンボル。
金峰山。2595m。奥秩父の盟主です。 五丈石。遠くからも分かる金峰山のシンボル。

山頂の気温は5℃。岩陰で風を避けながら休んでいる登山者が3,4人ほど。今日初めて人に出会った。この縦走のハイライトとなる山頂なのに、あの展望はまたお預けになったか。

単独行ばかり。人のことは言えませんが 雪面のトラバース
単独行ばかり。人のことは言えませんが。 雪面のトラバース。

千代の吹き上げから降りる辺りで行く手が崖になり一度道を見失う。10mほど引き返すと雪面のトラバースのトレースが目に入った。悪天だと道が分りにくく登山地図ではこれは分からない。この辺りまで地形図を用意しておくべきだった。

豪雨につかまらないよう先を急ぐ。樹林帯に入ってから大日岩までの下りは、いつもの如くカッチカチに凍っている。

樹林帯に入ると氷化した道。 大日岩
樹林帯に入ると氷化した道。 大日岩。

大日小屋横の沢でアイゼンを洗ってから雨の森の中を小気味よく下っていく。連休中といえど暦では平日だからか、行き交う人は少なく針葉樹の森は静かなものだ。

大日小屋 森の道
大日小屋。 森の道。

富士見平小屋到着

広い天場は濃霧に包まれてテントは2,3張程度。小屋前にザックを置いてバスの時刻を確認すると今ちょうど出た時間だ。

次のバスまで時間があるし、小屋番さんが替わったと聞いていたので偵察がてらお茶でも頂くとするか。
富士見小屋到着

中に入ると雰囲気が全く変わって洒落た山の喫茶店になっていた。前があまりにも雑多な感じだったので、様変わりした内装に余計に驚いた。濡れたカッパを半分降ろして長イスに座ったのに、中のズボンも濡れていたのでごめんなさい。

登山道と同様に小屋の中にも登山者はなく、山屋でもある小屋の主のご夫婦と色々お話しさせてもらった。まったりし過ぎてお代を払わないで出そうになった。あぶない、前にも馴染みの店でやったっけ。

金峰山。2595m。奥秩父の盟主です。 バラ入り紅茶。バラのジャムが付いています。
小屋の中。いい雰囲気です。 バラ入り紅茶。バラのジャムが付いています。バケットもご馳走さまでした!

小屋を出る頃、雨が少し強くなってきていた。わざわざ表に出てこられたご夫婦に見送られながら最後の道へ下り始める。また来ます。

途中の林道を越えても誰にも会わなかった。滑りやすい荒れた登山道を過ぎるとゴールはすぐそこ。
やがて、車道が見えた、瑞牆山荘も見えてきた。

最後の道へ 瑞牆山荘(みずがき山荘)が見えた
最後の道へ。 瑞牆山荘(みずがき山荘)が見えた。

少し足早になった。そして登山道からバス停に飛び出し、両手を中途半端に上げなら「やったー!」と小さな声。なんだか空々しく感じてごまかす様に振り返ってみると、雨に煙った森はしんとして余計に寂しげに見えた。

もう、いいか。この時期の奥秩父の縦走はこれが最後かな。

山荘の前にはバスが一台止まっているだけで人影は無い。発車まで時間があるのでトイレの水道水を汲んで汚れたスパッツや靴を道端で洗った。

乗客1人のバス出発 乗客1人のバス出発

1人では勿体なくて申し訳ない気持ちになっていたところに、途中で大荷物の若い女性が乗ってきた。連休を実家で過ごした学生さんかな?

増富の湯

下山後の一杯はもちろんここ。寒い山から下りてきての温泉はたまりません。

湯上り後は、具だくさんのやっこと馬もつ。もうね、生ビールが昇天しそうです。
もちろん増富の湯

温泉施設から外に出ると大雨。ぎりぎりだった。次のバスに乗って韮崎駅まで。

指定席を取って酒を買い込み旅気分で帰った。列車の窓には滝の様に雨だれが流れている。山旅の達成感はどうだろうか?もちろん歩ききった高揚感はあるが、過去の達成感と比べようとしても思い出せない。まあ、比べられるものではないのだが。

そういや今日は平日だから馴染みの飲み屋が開いているぞ。山旅の事を思い返しながら飲むビールはうまいに決まっている。

家に着いたらザックを台所に放って、大雨の中帰ってきた格好のままお店へと。

エビスの生、いきますーす! エビスの生、いきますーす!

大雨のGWだというのにお店は混んでいて拍子抜け。店員さんは皆忙しそうだ。常連さんが陣取るカウンターの隅に座って1人祝杯をあげる。

2杯目を出してくれたママさんに、山のことを聞かれたので得意げに話すと「まあ、そんなに歩いたの?えらいわね。」とほめてもらって上機嫌。まるで子供だ。

人は月日が経つにつれ、辛い出来事の思い出は薄れて行き、やがて良い思い出だけが残っていくものだと聞いたことがある。今回奥秩父に気が向いた途端、あの森を、あの展望を、あの道を、ひたすら突き進みたくなっていた。

前回も前々回もきつい山行だったと頭では理解している。だけど、5年という歳月はいい思い出だけを残してくれる時間なのかな。

12時近くになるのに店内の熱気はおさまらない。私も酔いが回って何杯飲んだかあやしいが、この山旅を想って目を閉じてみれば、やがて店内の賑わいはどこか遠くに聞こるようで、(ザッ、ザッ)と、あの道を行く足音がまだ自分の中で響いているような気がした。


HOMEヘ