奥秩父主脈縦走    2012/04/28 - 05/02
1日目:奥多摩駅−六ッ石山−鷹ノ巣山避難小屋−七ッ石山−奥多摩小屋(天泊)
2日目:奥多摩小屋−雲取山−飛龍山−山ノ神土−水干−笠取小屋(天泊)
3日目:笠取小屋−雁峠−古礼山−水晶山−雁坂峠−雁坂嶺−破風山−木賊山−甲武信小屋(天泊)
4日目甲武信小屋−甲武信ヶ岳−国師ノタル−国師ヶ岳−北奥千丈岳−大弛小屋(小屋泊)
5日目:大弛小屋−朝日岳−金峰山−富士見平小屋−瑞牆山荘

4日目 05/01

 甲武信小屋          4:34
 甲武信ヶ岳          4:54
 東梓             8:41
 国師ノタル          9:35
 国師ヶ岳          13:16
 北奥千丈岳         13:37
 大弛小屋(小屋泊)     14:34

夜中は寒さで何度か目を覚ました。3時前に起き出して外気を測ると1℃。気温はそれほど下がっていないし寝る装備も前と同じなので寒さに弱くなったかな。とにかく雪が締まっているうちに歩きたいので、カフェオレとカロリーメイトでの軽い朝食を済ませ、ヘッデン歩きのつもりで準備を始めた。

テントを撤収していると、雲取から抜きつ抜かれつのワカンの単独行の方がテント横を通り過ぎる時に「風邪を引いてしまったようで体調が思わしくないのでここで下山します。」と申し訳なさそうに声を掛けてくれた。

その表情からは、自分の山行が終わったんだという観念した様子と、(最後まで行ってください)と私を送り出す気持ちと、様々な想いが伝わってきた。「そうですか、お気をつけて。私は行きます。」と背中を押されたような思いで笑顔で答えた。

甲武信小屋、出発 甲武信小屋、出発。

テント組の中では一番先に出たと思う。夜中は星空だったのに朝方はガスに包まれてしまった。

甲武信の山頂までは多くの人に踏み固められ凍った道になっている。この時期は小屋からアイゼン装着要だ。

甲武信ヶ岳山頂。

山頂は冷気を含んだ風が吹き付けるのみで展望は全く無し。雲の切れ間からちらっと朝日が見えたがそれも一瞬のことだった。

この山行ではこの写真以降、一眼レフを出すことは無かった。
甲武信ヶ岳山頂

山頂には天泊装備の若い男性が後から到着した。しかし話を聞くと西沢渓谷へ降りるらしい。昨日甲武信に泊まった登山者は、国師越えしてきた登山者や小屋の人の話を聞いて断念した人が多いのだろう。

自分はただの実線コースの縦走屋だが、この時期に2度も越えている経験は大きく不安はまず無かった。

ガレた道をガシャガシャいわせて樹林帯に下りる。雪は確かに多いが想定内。気温が高いわりには不思議と締まって安定している。連休前半のバカっ晴れで沈んで締まってくれたのかな。もちろん逆から抜けて来た登山者のトレースがしっかりとしているのが大きい。

下り始めはトレースがしっかりしていた 千曲川源流への分岐
下り始めはトレースがしっかりしていた。 千曲川源流への分岐。

なんて甘く思っていたら、幅広のトレースは分岐から千曲川源流方面に向かっていた。私が進むべき国師ヶ岳方面はツボ足の痕がはっきりと分かる踏み跡程度。そういうことね。

赤テ類が少ない平坦な箇所は話の通り迷いながらのトレースで、前半の暑い日に踏み抜きながら超えてきた苦労がよく判る。甲武信ヶ岳−大弛峠間だけは地形図を用意してきたので、ポイント毎に高度と方位を確認しながら慎重に進む。

トレースを辿ってひたすら進む 富士見
トレースを辿ってひたすら進む 富士見

富士見で左へ直角に折れ、唯一の展望地といえる両門ノ頭に出てみれば小雨交じりの風が吹き付け、森に逃げ込めば風にうなる木々の音で気が滅入る。

両門の頭。ここの勝率も悪いなあ。 ワカンの忘れ物。必要場所の真ん中でなぜに?
両門の頭。ここの勝率も悪いなあ。 ワカンの忘れ物。必要場所の真ん中でなぜに?

こんな天気だと風雨を避けてくれる樹林帯の道が助かる。とはいえ濡れた枝葉を手でよけながら歩く箇所も多く、安物のレインウェアではいつの間にかインナーがぐっしょりになっていた。袖口から入った雨が原因。上だけ着ていたのでズボンも全体的に濡れていた。いつも後手後手になるなあ。こういうのが命取りになる場合もあるのに。

東梓 東梓

ここで急に左足首が痛み出した。気付かないうちに踏み抜きで捻ってしまったか?と思いながら構わず行くが、そのうち激痛でうなり声が出るほどになった。

なんだこれは?疲労骨折か?と思うほどで、とにかく急な負荷をかけないようゆっくり進む。

国師ノタル

この鞍部から登りになるので行動食休憩。歩きの最中は足の痛みはひどくなる一方だが、動かさないでいれば気付かないぐらいだ。

靴とくるぶしの間に予備手袋を当て材の様にさしこみ、靴紐を緩めて慎重に登り始めた。
国師ノタル

苦痛に顔を歪めながら登り続けていると今日初めてすれ違う登山者が下りてきた。見たところ小屋泊装備なのに意外とのんびりした時間だな。

ひたすら登る 天狗尾根分岐
ひたすら登る。 天狗尾根分岐。

天泊装備の単独行ともすれ違ってから我慢の登りを続け、やっとの思いで天狗尾根と国師の分岐まで登りきった。ほっと一息。足が痛くなってからCTは倍以上もかかっていた。相変わらず足首は痛いが痛みにも慣れてきた気がする。

深い雪を何度も踏み抜きながら濡れた枝葉を掻き分けて進み、やっとこさ国師ヶ岳の山頂に出ると風雨の中で展望は全く無し。山頂での暖かいコーヒー計画は5年前と同様に崩れ去った。

国師ヶ岳 国師ヶ岳

かつては奥秩父の中でも最も深い山として憧れを持った岳人も居たそうだ。

今は近くの大弛峠に林道が通ってしまい手頃な日帰りの山という位置付けだが、林道が冬期閉鎖されたこの時期は昔と同じ時間が流れている。

北奥千丈岳の分岐

踏み跡を探しながら歩いていると北奥千丈岳との分岐。道標は完全に雪に埋もれている。
北奥千丈岳の分岐

前回は吹雪で寄ることを諦めたが、さすがに奥秩父最高峰をまた素通りでは気がひける。ザックをデポし踏み跡が残る北奥千丈岳へ寄り道することにした。

奥秩父最高峰、北奥千丈岳にて 奥秩父最高峰、北奥千丈岳にて。2601m。

岩が折り重なる山頂でこの旅最初の自分撮り。

(10年ぶりのピークか)コンデジの写真を確認しながらそう思っていると、10年前の縦走のことが断片的に頭に浮かんでくる。

後は下るだけだが、階段が多いので残雪に隠れた落とし穴が随所に出来るので要注意な道だ。雪が多く木の階段の露出がほとんど無かったので、アイゼンはそのままに場所を選んで慎重に下った。

大弛峠への下り道。 大弛小屋到着!
大弛峠への下り道。階段多し。 大弛小屋到着!

大弛小屋まで10時間、本当に長かったー!。CTは足を痛めせいで3時間以上もオーバーした。

「こんにちは」と小屋の扉を開けると若い大柄な男性が小屋番として入っていた。2,3話すうちに熱燗も用意できるとの回答。なんのこだわりも無く小屋泊決定。全身濡れているし今日は楽させてもらおう。

ストーブに薪をたくさんくべてもらい荷物を広げる。客は私だけしか居なく小屋番さんが奥に下がると、薪がパチッと弾ける音だけが室内に響いていた。やがて濡れた手袋から湯気が立ち上り、ビールを片手に揺らめく炎をずっと見ていた。

ストーブ前。一人なので贅沢に使わせてもらう。 水場は小屋の裏手で凍った溝からすくいます。
ストーブ前。一人なので贅沢に使わせてもらう。 水場は小屋の裏手で凍った溝からすくいます。

1時間ほど過ぎて、予約の2人の到着が遅く小屋番さんが心配して外をうかがっていると、年配男性2人組が到着した。2人は金峰山を越え、それ以降は誰にも会わずに小屋まで来たとのこと。山慣れた風の人達だが年齢もあって体力的に相当疲れたらしい。小屋泊装備だと行程の遅れがあると不安からも疲れが倍増するんだと思う。

灯りがともり夕食タイム。 こちらはストーブがある寝所。
灯りがともり夕食タイム。小屋の入口が食卓になる。 こちらはストーブがある寝所。

ビール2本とチューハイ1本を飲み干していい気分。私は素泊まりなので夕食は自前のフリーズドライのカレー。やけに腹が減っていたのでふりかけも使って2食分のアルファ米を全部平らげた。そして味噌汁の代わりにまたビールを追加。ぜいたく〜

フリーズドライのカレーとアルファ米。 夕食後のお楽しみ。熱燗は沁みるぜー!
フリーズドライのカレーとアルファ米。 お楽しみ。熱燗は五臓六腑に沁みるぜー!

この日は我ら3人だけだった。結局、甲武信から抜けたのは私だけということか。2人組は甲武信へ抜ける予定ということで、私や小屋番さんの話で行くべきか決めかねている様だ。

ラジオの天気予報は「明日は激しい雨」と言っている。酔いも手伝って(それぐらいの方が景気がいいや!)なんてバカなことを思いながら酒を飲んだ。

ストーブの炎

2人組は疲れ果て夕食後には早々に布団に入った。

私は何を考えるでもなく炎が作り出す明かりに身を任せて、残ったスコッチを飲みながら最後の夜を過ごした。
ストーブの炎


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