栂海新道縦走
 2008/08/09-12
 1日目:栂池自然園−白馬大池−白馬岳−村営頂上宿舎
 2日目:村営頂上宿舎−白馬岳−雪倉岳−朝日小屋
 3日目:朝日小屋−朝日岳−長栂山−サワガニ山−栂海山荘−白鳥小屋
 4日目:白鳥小屋−ホテル親不知(国道8号)−親不知海岸

3日目 08/11
朝日小屋          4:10
朝日岳           5:10
長栂山           6:40
黒岩山           9:05
サワガニ山        10:20 10:45発
栂海山荘         12:00 12:20発
白鳥小屋(泊)      14:45

夜中はちょっと寒かったが昨日ほどではなかった。やはり標高が下がったのが大きいのかな。 今日の予定は栂海山荘までの7時間半のCT。時間的には楽だけど早出は変らず。 朝日岳まで1時間、ちょうど日の出に間に合うかもしれない。

ところが3時前は星空だったのに、出発する頃になると辺りはガスに包まれた。 昨日、白馬の山頂から見た時も朝日岳の山頂部には笠雲があったので、気象的にもそういう場所なのかもしれない。 天場からの先行は2,3組ほど。皆さん早出だなあと感心しながら、私もヘッドランプの明かりを頼りに歩き出した。

道は歩き易く所々に木道が敷かれている。ひと登りして残雪の登山道を越え薄明るくなる頃、 この山行で初めての雷鳥が雪解けの斜面で何かをついばんでいた。暗いので雷鳥の写真はあきらめて先を急ぎ、 天泊の5人組と小屋泊の単独者を抜かして朝日岳山頂に到着。 山頂では3人組が晴れるのを待っていた。時間的にはとうに日の出の時刻を過ぎている。 時折りうっすらと青空が見えるが、すっきりと晴れ渡るには時間がかかりそうだ。 ガスの中に太陽の輪郭が浮かんだ後に先へ向かった。


登山道には残雪もあり

道は整備されています

朝日岳山頂

ゆっくり下っていくと見る間に明るくなりガスの下に出た。日に照らされて体感温度が一気に上がる。 昨日と同じように山頂部にだけ笠雲がかかっていたようだ。

前方、千代の吹上を越えて雪田が残る緑野の山が長栂山。 地図によるとあの平たい山頂部は、池塘を縫うように木道が続く登山道になっているらしい。

長栂山へ

朝もやの中に優しげな山容を見せている。


朝露がついた白山小桜

千代の吹上

千代の吹き上げまで降りると、写真を撮っている間に抜かして行った単独行者が、蓮華温泉へ下って行くのが見えた。 私はそのまま尾根道へ。

分岐の岩肌には赤ペンキで「←日本海」の文字が。おお、ちょっと震えがきたぞ。ついに栂海新道が始まった。


あ、この看板も始まった!

しびれる行き先です

朝日池

長栂山へ

道は付けられたばかりの様に新しくてオオシラビソの森をくり抜いて続いている。 刈り払いが行われたばかりらしく、草や枝葉が道に落ちて樹木のいい香りが漂っていた。

長身の私が天泊装備のザックを背負っていても、枝に引っかかる様なことも無くて良い道だ。

そんな道の視界が開けると長栂山の木道が始まる。イワイチョウが一面に咲き湿原が朝日に輝いてなんとも美しい。 振り返ると朝日岳はまだ雲に巻かれていた。ガスが取れれば素敵な絵になりそうなのに。


長栂山の木道

木道からの朝日岳

独り占めの草原はとても気持ち良くて、上ずったように足元に力が入らなくてなかなか足が進まない。

ニッコウキスゲの登山道

照葉ノ池のほとりを巻くようにゆるやかに登ると、登山道をニッコウキスゲが囲んでいた。

いつの間にか眺望が利くようになっていて、照葉ノ池越しに遠く鋭鋒の白馬岳と旭岳が並んでいた。 初夏のような爽やかな展望に感激。一気に栂海新道のファンになった。

照葉ノ池と白馬遠望 長栂山より

長栂山のピークは池の縁から一旦下って登り返した殺風景な丘にあった。


長栂山山頂部 天上に浮かんでいるよう

長栂山山頂

ちょこんと盛り上がった長栂山の小さなピークからは、ゆるやかに下っていく緑野の尾根道と、そこに点在する湿原が見えていた。

栂海新道 長栂山より

アヤメ平、黒岩平を越えて、あの雲の下へ歩いていく。


アヤメ平へ下りる登山道

アヤメ平

低木帯を抜けてまた明るい道に戻り草原を下る。よくある名前のアヤメ平は緑一面の世界。草原の向こうには残雪が輝く長栂山が美しい。


青空文字の標識もいいね

長栂山

アヤメ平の標識がいい味を出している。 栂海新道はサワガニ山岳会という地元の山岳会がこつこつと拓いたもので、 随所に立てられた標識にも特徴があり、板金に溶断で文字部を穴明けした書体がかわいい。


ヒオウギアヤメ

クルマユリの群生

ハクサンシャジンの大株

度々現われる湿原に喜びながら歩いていくとやがてガスの中へ。 残雪を何度か越えて人通りが全く無い道を歩く。天日がないと寂しげな道だ。


雲の中へ下りていくようだ

残雪を越える箇所もちらほら

黒岩平付近

黒岩平あたりからガスに包まれていたが、このコースの美しさにやられてしまってずっと上機嫌な歩み。

登山道には「平成18年度施工」とプレートが付いた真新しい木道が設置されていた。 これは山岳会じゃないよな?と考えながら歩いていると、ガスの中に突如プレハブ小屋が現われてびっくり。

小屋の表に出てきた作業員の方に話を聞くと、環境省からの発注で黒岩平に臨時のプレハブ小屋を設置して、 木道の敷設作業をしているとのことだった。


キヌガサソウ

黒岩の水場 水量豊富

黒岩平の作業小屋

黒岩の水場は水量豊かな沢で冷たい水が美味しい。沢の近くで3人組の天泊装備の登山者が休んでいたので 話しかけてみると白鳥小屋までらしい。確かに行けないことも無いわな、と私もここで悩む。 でも遅い時間に着いてしまうと汗でびっしょりの服が乾かないよなあ、 山中での着替えは基本的に非常時と思っているので、 可能なかぎり着替えたくない(下界公共交通機関用と山中非常用の2つを持って来ている)。 とりあえず栂海山荘まで行ってから考えようかと、軽く食べてから歩きだした。

黒岩平 広大な草原の中に続く一本の道 こんな天気でも気持ちのいい場所です。

黒岩山のピークより

黒岩山でガスが晴れるのをしばらく待っていると、 はるか遠くへ続く尾根が姿を現し、その尾根通しに付けられた道も見えてきた。
うわ、こりゃまだまだ長いぞ。しかも道が見えるということは日陰が無いということだ。


登山道
急に日が照ってきて激暑い

文子ノ池
ほとりには水芭蕉が咲いていた

標識が倒れても文字が読めるのが利点?


文子の池付近は草原の尾根です

黒岩平はガスがかかったまま

ひたすらアップダウンが続く道は、標高も低くなったせいでムワっと蒸した熱い空気と照りつける太陽。 汗のシャワーを浴びたように全身ずぶ濡れ。登りきったサワガニ山でたまらず大休止。 靴下まで脱いで水をがぶ飲みしながら、今日はどこまで行くかまだ迷っていた。


犬ヶ岳遠望 遥か彼方

サワガニ山へ直登 あぢい

サワガニ山 1612.3m

犬ヶ岳へ

山頂部が平たい犬ヶ岳が近付いてきた。干物になりそうな体で歩き続けていくと、周りをガスが覆って日を隠してくれた。 それでも汗が滝のように流れ落ちる。

手持ちの水が十分にあったので北俣の水場はスルーして犬ヶ岳へ。 いやー長かった!道標の写真を撮ってから少し下ると栂海山荘に到着。 山荘前には抜きつ抜かれつ歩いていた年配の単独女性が休んでいた。


北俣ノ水場 往復10分

犬ヶ岳山頂部はヤセ尾根

犬ヶ岳山頂

今日はここまでかな?と思いながら、まずは小屋の内部を偵察。中は外見に反してけっこう広く小奇麗だ。 でもこの小屋は、さわがに山岳会所有のものなので、事前に宿泊許可を取っておく必要がある。 今回はバタバタっと出かけてきたのでそれをしていなかった。


栂海山荘 一段下にはヘリポート有
 

内部 当たり前ですがきれいです
 

営業小屋でも避難小屋でも
ありません。使用上は注意!

そんなに混み合わないかな?テントもあるしな、と考えながら女性に話しかけてみると、やっぱり白鳥小屋まで行くという。 話を聞いてみると、なんとこの女性は親不知から栂海新道を登ってきて朝日小屋で折り返し、 また栂海新道を下っているところだそうだ。 いやはや、天泊装備で私の歩きと同じ速さだし、この辺りを歩いている人はみな健脚だ。

話の中で白鳥小屋はいわゆる避難小屋で、山岳会所有のものではないらしいことが判る。 それならば気兼ねが無いかと、休憩で少しばかり体力が復活していたので、私も白鳥小屋まで行くことに決めた。

そしてここから白鳥小屋までがこの山旅で一番辛い道のりだった。 下っては上ってを繰り返す道で、木に寄りかかって休むこと数え切れず遅々として進まず。 冷たいビールが待ってないんだもの、自分を鼓舞する材料もなし。

先行していた女性が黄蓮の水場で休んでいたので、私も水場の確認がてら行ってみると、 水場までの距離は時間にして片道2分半で、地図の表記より近いのは良いのだが涸れかかったような沢水で、 上の方から石伝いに流れて落ちるぬるい水だった。 女性が言うには、北俣ノ水場は冷たくて美味しいが距離は地図の通りで往復10分とのこと。 「ここの水場は近いんだけど冷たくないのよ。」なるほどね、さすがです。


栂海山荘から白鳥小屋へ歩き出す

登山道に「黄蓮の水場」の標識

黄蓮ノ水場 細いです

ブナの林道

この辺りはブナの森で一見涼しげな感じだが、もうアルプスの雰囲気は消え失せて実際は蒸し暑い。

栂海新道は秋に人気があるルートだそうで、その時期は涼しいというのもあるが紅葉も良いとのこと。 しかし、秋は栂海山荘の混みようが半端ないらしく、所有している山岳会の方も山荘に入って寝る場所など指定しているが、 事前の使用許可を取っていない登山者も来るので、ぎゅうぎゅうに詰めても入らないことがあるらしい。

さて、うまくない水を飲んだ後は足を踏み出し続けるマシーンと化す。 黒岩山からこちら側は、登山道を歩いていると左右の藪の中に「しゅるしゅるっ」とヘビが逃げていく音がよくする。 たまに逃げ遅れたヘビを見ることもあるし死骸や抜け殻も落ちている。 登降時には下手に手をつかないように気を付けながら歩く。


菊石山 1209.8m

下駒ヶ岳 1241m

登山道は整備されています

夢遊病者の様にふらふらと歩いていると、やがて右手に細い藪の降り口が現れた。 これが夏場は涸れるという白鳥の水場だな。 よし!と、残った力を振り絞るように木の幹を掴みながら登っていくと、上方、木々の中に白い空間がぽっかりと見えてきた。 そこに出るといきなり目の前に小屋があった。

白鳥小屋は周りを低木に囲れ、標高1286.9mのまさに白鳥山山頂に建っていた。


こういう道にヘビ君がいます

最後の急登、光りを目指して

白鳥小屋 1286.9m

白鳥小屋内部

ザックを外に転がして小屋の中に入るとまだ誰も居なかった。 内部はこじんまりとしているがきれいに片付けられ、2階も居心地が良さそうな新しい小屋だった。

でも中は暑くてとても居られない。外の虫を入れちゃまずかろうと窓を開放することもできず、 とりあえず着乾しの為に外に出て、ズボンの膝下を外して濡れた衣服のままでぼーっと呆けた。

程なくして単独女性も到着。よく歩いたもんだと話していたら単独男性もやってきた。 天泊装備のようだが見憶えが無かったので小屋に泊まった方かな? 「朝日小屋からですか?」と一応聞いてみたら「雪倉からです。」だって。えー!雪倉の避難小屋からですか! 今日のCT14時間じゃないですか!驚きながら興味を持って色々と聞いてみると、 昨日は猿倉から大雪渓を登って雪倉岳避難小屋まで、今日は朝6時に避難小屋を出てこの時間に到着だそうだ。 なんだそれ、超速過ぎです。コース全体で1日半は短縮して歩いているなあ。 ほんと栂海新道を歩く登山者は健脚な人ばかりだ。


栂海新道歴史その1
けっこうやんちゃな計画です

栂海新道歴史その2
 

夕飯は麻婆豆腐丼とちょいがけカレー

日は傾いている頃だが雲に隠れて出てこない。 風も無いし標高が低いからか湿度も高く、こんな条件では乾かないものだなと諦めて小屋の2階で下着を替えた。 虫が多いが構わず外で夕食にし、2人組と3人組が到着したタイミングで私も小屋の中に入った。

この避難小屋は青海町(今は糸魚川市に合併)が建てたもので、管理はサワガニ山岳会の方に委託されている。 小屋使用時は備え付けの台帳に氏名や住所を記帳すればよい。

夕日だよ、と教えてもらい2階の窓から日本海へ沈んでいるだろう夕日を眺めた。 太陽が欠けていくけど海ではなく雲に沈んでいるのかな?それでも今日の終わりらしい絵を見ることができた。


1階の窓から犬ヶ岳方向の見晴らし。栂海山荘も見える

日本海への落日

糸魚川の街の灯り

夜も暑く蚊が入り込んでうっとうしくて寝付けない。 もちろんビールは無しで、焼酎をちょっと飲んでから寝た。

今日は疲れたけど、明日の行程がぐんと楽になったぞ。


4日目ヘ