北アルプス横断縦走 2009 夏 3日目  09.08.10
薬師峠キャンプ場     06:05
黒部五郎岳カール分岐   10:10
黒部五郎小舎       11:25/50
双六小屋(天泊)      15:20

午前2時前、携帯が鳴るより先に風雨の音で目が覚めた。 30分ほどうつらうつらと横になっていたが、出発までに止むことを祈って朝食の支度を始めた。 だが、嵐のようにテントが変形するほど風が強くなり、テント生地が体に当たるので、一時、火器を使うのを止めたぐらいだった。

なんとか朝ご飯を済ませ、横になって待ってみたが一向に天候が回復する兆しも無く、出発予定の時刻は過ぎて外が明るくなってきた。 近くのテントからは「今日は停滞〜」との声も聞こえてくる。 私も今日は停滞かな?と諦めかけて、風雨が弱まった隙にトイレの為に外へ出た。 暗雲が空全体を覆い、北ノ俣岳はうっすらと見えているが、黒部五郎は完全に雨雲の中。

しかし、トイレから戻ると撤収を始めているテントもちらほらと。 折立に下りるだけだったら、撤収もありかなと眺めていたが、確かに今なら撤収可能な雨風だ。 今日停滞すれば5日間の予定が6日間になることは確実。 でも今日に予定していた双六小屋までは無理だとしても、一つ前の黒部五郎小舎まで行けば、 最終日のがんばり次第で5日間で終えられるかもしれない。 予備日は4日間もあるし、予備食も1,2日程度はある。 急ぐ旅でもないのだが、今年の天候を考えると、以後も停滞が連続する可能性もある。 黒部五郎小舎なら一日で新穂高温泉への下山も可能だし、、、よし、行くか!

出発

優柔不断な性格のおかげで、撤収を終え天場を出たのは6時。 予定より2時間遅れのため、黒部五郎小舎までとしても、ちょうどの時間だろう。

完全防備で腕を組みながら歩き始めた。
出発

太郎平小屋から先は人影が見えない。多少不安だが、天候も未明の荒れ方よりは若干弱くなっていたので、展望が全く無い中をひたすら歩き続けた。 北ノ俣岳から稜線に出ると、予想通りよろけるほどの強風になった。

太郎平からの小屋泊の単独男性を抜かし、薬師峠から先行していた学生の一団をも抜かすと、私が先頭になったようだ。 なーんだ、皆な同じように軟弱だなあ。 天候のせいでいつもの雨具の蒸れる暑さも感じず、立ち止まらずに黙々と歩く。 人がいない代わりに、登山道には先導するように雷鳥が歩いてくれた。つかず離れずの、この距離感が面白い。

岩が折り重なる赤木岳を越える頃、すれ違う登山者が現れだした。 ほとんどの人がカールの中を通ってきていたが、稜線コースを来た1組のご夫婦に話を聞くと、ものすごい突風とのこと。 まあ、そうだわな。1度登っているピークなのでピストンも考えず、分岐からはカールコースを選択した。

カールの底は全体が沢のようになっていた。ずいぶん前から靴の中も完全に浸水して、歩くたびにグジュグジュと感触が気持ち悪い。 脱いだらもの凄い臭いになっているだろうなあ。靴の中がそういう状態ということもあって、沢の中を構わず歩いていく。 晴れていれば迫力の圏谷の中で、のんびりと花を愛でることもできたのに。

黒部五郎岳のカールの中 黒部五郎岳のカールの中

一枚だけ撮ってみた。

カールを抜けて樹林帯に入った後は、うんざりする低木帯の水溜りの道が続く。 我慢の歩きを続けていると、やっと目の前が開け五郎平に出た。小屋もすぐなので急ぎ足になった。

黒部五郎小舎 再び低木帯を抜けると赤い屋根が見えた。小屋裏の天場には停滞組と思われるテントが数張りほど。 黒部五郎小舎のテーブルに荷を下ろしたのは11:25。ふうっ。

写真も撮らず、花も愛でず、展望も無しで一心不乱に歩くことだけの5時間20分だった。

黒部五郎小舎にて

さて、ちょっと前から考えていたのだが、CTを短縮して歩いているようだし、 双六小屋まで行けるのではないだろうか。とりあえず、小屋の中に入ってジュースを飲みながら検討開始。
黒部五郎小舎

まだ何も食べていなかったので、甘納豆を口の中にほおり込んでよく噛みながら考える。 この天候ならば午後になっても夏山定番の雷雨は無いだろう。 CT通りだと双六小屋へは15時半ごろ着となる。 疲れは感じていなかった。小屋で聞いた予報では台風の影響で、明日もどう転ぶか判らないようだ。どうせ濡れ鼠だし、このまま行くことに決めた。

三俣蓮華の登りは以前も雨だった。 山をやってると、相性が悪い山だと感じる山があると思うが、私にはこの山域がそうなんだろう、と思いながら急登を登った。 ハイマツ帯に出る頃には雨も止み、真っ白な砂礫の道を登り続けると黒部乗越の分岐。

歩いていても寒さを感じる。食べてない分、代謝が悪く体が発熱しないようで、おまけに吐き気までしてきた。 最近こうなることが多い。ほんとに歳のせいかもと寂しさを感じつつ、小ピークが連続する展望が無いガスの中を歩き続けた。

双六岳越えは断念し、中道から小屋へ。風の影響が無いカールのような斜面には、コバイケイソウが一面に広がり、 霧の中をさ迷うように歩く道は、何も音が聞こえず時間が止まっているようだ。

三俣蓮華は三県の境にある コバイケイソウ 小屋だ〜
三俣蓮華は三県の境にある コバイケイソウ 小屋だ〜

眼下に双六小屋が見えた時は思わず「見えた〜」と力無い声。

双六小屋 双六小屋

小屋前では大勢の登山者が休んでいる。

まずはカロリー補給だ!とネクターを一気飲み。
なんてうまいんだ〜〜
続いて水分補給でチューハイを一気飲み。
あ〜これもうまいぞ〜〜

飲み物の品揃え

さすが双六小屋、魅力的なものがいっぱいです。
飲み物の品揃え

天候も回復傾向で薄日が見えていた。少しでも乾かそうと思い、天場で荷物を広げる。 やや風が強いが、濡れ物を乾かすのにはそれも良かった。広げた荷物を石で固定して、ふらふらと小屋の表へ。

鷲羽岳 鷲羽岳
双六小屋前より

小屋前で憩いの準備をしていると、目の前の雲がみるみる取れて、やがて鷲羽岳が姿を現して歓声が起こった。

私はおでんタイム

今、鷲羽岳を眺めている人達も、私と似たような雨降りの一日だったんだろうな。

私は目の前のおでんと生ビールに歓喜の叫び。
おでんで

双六小屋の天場 双六小屋の天場

双六池の向こうは笠ヶ岳へと続く山塊。

缶ビールを何本か追加し、夕飯代りのつまみでお腹も一杯になった。 天場へ戻る頃には、靴下と登山靴以外は大体乾いていた。テントの数も停滞組の影響かそれなりの賑わい。

明日の朝は頑張って早出しよう。日が昇る前に樅沢岳へ登って、朝日に透かされる槍のシルエットが見たい。 そんな展望を思い描きながらシュラフに潜った。


4日目ヘ 北アルプス横断縦走