北アルプス中部縦走 2007 夏 7日目  07.08.16
奥黒部ヒュッテ     3:55
平ノ渡(針ノ木側)   5:50
−白鳥丸にて平ノ小屋へ−
平ノ小屋        6:55
ロッジくろよん    10:25
黒部ダム       11:10
扇沢         11:50

3:55 出発

こちら(針ノ木側)から平ノ渡の一番早い乗船時間は6:20、次いで10:20。この4時間の差は大きい。

天場から平ノ渡までのCTは2時間。予定通り朝一番に乗るべく出発した。
3:55 出発

が、いきなり行く手が判らない。うろうろしていたら、沢に架かる橋がヘッドランプの明かりに浮かび上がった。 早出する時は、前日のうちに取り付き部を確認しておくべきなのに、昨日は着いた喜びで全く忘れていた。反省。

轟々と流れる沢音が、暗闇の谷に響いてとても不気味だ。一度、ザックが桟道の岩に引っ掛かり、不意にバランスを崩してヒヤッとした。 この暗闇の中を、梯子・橋・岩をえぐった道などを歩くのは危ない。気を引き締める。

丸太のハシゴ状の階段多し 枝沢に架かる橋を何度も渡る 明るくなってきた。立山かな?
丸太のハシゴ状の階段多し
朝方は濡れているので注意
枝沢に架かる橋を何度も渡る 明るくなってきた。立山かな?

明るくなってくると、結構高い場所を歩いていたことが判る。 ヘッドランプでの行動に慣れていない人は、大人しく10:20が良いだろし、谷底の景観がある方が、奥黒部の雰囲気も楽しめていいと思う。

それにしても、丸太で組まれた道や梯子を、ここまで整備するのには大変な労苦だろう。 毎年掛けて、外して、を繰り返しているのだから、我々登山者にはとてもありがたく、感謝しながら渡る。

丸太道 登降が多く距離の割に疲れる この様な道になるとホッと一息
丸太道 登降が多く距離の割に疲れる この様な道になるとホッと一息

空中に架かる丸太道 平ノ渡場の看板
空中に架かる丸太道
一体どうやって設置したのか?。恐る恐る足を踏み出したが、もちろんしっかり架けられていた
平ノ渡場の看板 ※画像クリックで拡大
船着場への下りの道と分かれる。前方は避難小屋への道だが、現在小屋は使用不適らしい。

急いで歩いたはずがCT通りの到着。暗い中歩き始めたこともあるが、この区間のCTは厳しめだと思う。 船着場へ降りると先着者3名、いったいどこから来たの?。船を待つ間に船着場には7,8名が溜まった。昨日天場で一緒だった方もちらほら。皆さんさすが。

数分遅れて対岸から船が姿を現した。「ほんとに来たー!」来なけりゃ困るが、そんな第一声だった。 こんな山奥で船に乗るなど不思議な気分だが、わくわくしながら到着を待つ。
※注.時間に人影が見えない時は欠航になるので、早めに船着場に下りているように。

船着場へ おぉ、船が来たぞ! ”漁師びすこ、いざ神秘の海峡へ”
船着場へ おぉ、船が来たぞ! ”漁師びすこ、神秘の海峡へ!”
そんな感じにも見える

船の名前は白鳥丸(しらとり丸)。船自体に乗るのも10年以上ぶりかな。前に乗ったのはいつだったか覚えていないが、まさか次に乗るのがこんな場所とは、夢にも思わなかった。

今回の山行計画は、「赤牛に登る」、「船に乗る」、の2つで決めたこともあり、更に「高天原温泉」も加わって、船上から流れていく景色を眺めながら、なんとも言えぬ達成感に包まれ、あっという間の船旅だった。

対岸に着いたら、予定通りの船に乗れたことに気を良くして、平ノ小屋に寄ることにした。 残る道はまだ長いが、二人共、山を離れるのが名残惜しくなっていたのかもしれない。

平ノ小屋 黒部湖 平ノ小屋より
平ノ小屋 黒部湖 平ノ小屋より

結局、船に乗ったほとんどの登山者が、小屋に寄って休んでいた。皆、同じような気持ちになっていたんだと思う。 小屋からは、朝のやわらかな日が映る黒部湖がきれいだ。最後の日は、この小屋に泊まって旅の余韻に浸るのも、またいいかもしれない。

道はまだ手強い 道はまだ手強い

たっぷり休んでから出発。一度落ち着いてしまった体には、湖に沿って付けられた、くねくねと長く続く険しい道が堪える。

長い梯子を降りれば、対面にはそれより長い登りの梯子。

日陰の無い沢に架かる橋は、陽射しが強くて体が焼けるようだ。

今日は朝からずっと良い天気で、標高が低くなったせいもあるのか、気温もどんどん上がり、汗だくになりながらひたすら歩く。

木々の間からは赤牛岳 「ロッジくろよん」が見えてきた
木々の間からは赤牛岳 「ロッジくろよん」が見えてきた

最後の森 最後の森

いつの間にか周りを取り囲んでいたのは大木の森。

幾重にも重なる枝葉の日陰と、木漏れ日が涼しげで、ほてった体を冷やしてくれた。

スバリ岳、針ノ木岳を見上げる

ロッジくろよん手前、最後の沢から見上げたスバリ岳は大きかった。数日前、あの頂から目を細めて探した道を、今、こうして歩いている。

この数日間は、あっという間の出来事だった。
スバリ岳、針ノ木岳を見上げる

体中がびっしょりと汗まみれで、ヘトヘトになりながら、やっとロッジくろよんに到着した。いやー、長かった。 テーブルにザックを放り出し自販機を探す。 ロッジの入り口でジュースを買い、焼けるような陽射しを避けて、建物の隅の日陰に入りジュースを飲み干した。

軽くなった体でふらふらと2本目を買いに行くと、普段着の親子連れがダム方向から散策に来ていた。 それを見た途端、急に現実に引き戻された。ああ、これで山旅が終わったんだな。

ロッジくろよん 小屋からは舗装された道 やっと黒部ダムの全景が見えた!
ロッジくろよん 小屋からは舗装された道 やっと黒部ダムの全景が見えた!

ここからダムまでは、おそろしく歩き易い舗装された道。 ちらほらと観光客を見かけるようになってきたが、登山者を見かけることはほとんど無かった。

黒部湖を行ったり来たりしていた遊覧船の発着所が見える。びすこさんは何度か黒部ダムに観光で来たことがあるというし、 観光地としてメジャーな場所であると教えてくれた。「えー!たけさん来たことないの?」って、生まれも育ちも東北の片田舎ですから、こんな遠くまで来れないですよ。

オタカラコウのお花畑 黒部ダム到着
赤沢岳・鳴沢岳の稜線をトンネルが貫通し、
山の向こうが扇沢になる
黒部ダム到着

観光で来て楽しいのかなあ?と思って歩いていたが、やっぱりダムから見る風景は、全てが巨大で迫力がある。よくもこんな人工物を作れるものだ。

黒部ダムの上は大勢の観光客。もう完全に下界の匂いだ。小汚い格好で、ヒゲ面にタオルでほっかむりした私は、完全に場違いな姿。 でも、恥ずかしさはない。昔は登山装備姿で下界を歩くのは嫌だったが、今はそんなことは気にならなくなった。

黒部ダムの上から 黒部ダムの上から

空には、夏の終わりを匂わせる雲が流れていた。

ダム湖の向こう、遥か遠く、小さく浮かぶのは赤牛岳。 (あの山はとても大きいんだ。オレらは上で、もっと凄いものを見てきたんぜ)と、度量が小さい優越感に浸る。

こんな極上な日々は、なかなか体験できないだろう。誰にでも自慢できる7日間の山旅だった。

さあ、帰ろう。温泉に入って、小ぎれいな格好になって、蕎麦でも食べてやるか。


  北アルプス中部縦走