北アルプス中部縦走 2007 夏 6日目  07.08.15
高天原山荘       4:25
温泉沢ノ頭       8:20
赤牛岳        10:50
奥黒部ヒュッテ(天泊)15:10

今日のCTは11時間。出発は皆が目覚める時間になるので、騒がしい音を立てないように、用意済のザックをそっと持ち上げ山荘の外へ。 テントよりもぐっすり眠ることが出来なかった。小屋泊は何かと気を遣う。

夜露に濡れた表のテーブルでラーメンを作る。準備万端で出発する頃になっても、辺りはまだ暗闇だった。

温泉沢へ向かっている途中で2人組とすれ違った。離れた後で臆崖道さん夫妻だと気付いたので、そのままの別れになってしまった。 小屋前へ荷物を運んでいた時に出て行った2人がそうだったのかと思い出し、 誰も居ない星空の温泉は格別だったろうな、いい山旅をしていると羨ましく思った。

温泉沢 さて行きますか 大きな石ゴロで歩きにくい
温泉沢 さて行きますか 大きな石ゴロで歩きにくい

温泉沢から見上げる稜線方向は明るくなっていたが、足元は明かりがないと歩けない暗さ。ヘッドランプの明かりを頼りに、岩に付けられたマーキングに従って進んで行く。

昨日、山荘で手書きのルート図を確認していたので、地図に書かれたポイントと、マーキングを照らし合わせながら進んだ。 このルート図もその年で状況が変わるので、温泉沢を歩く場合は最新情報を山荘に確認してからの方がいい。

沢から尾根への取り付き部には、そのまま沢を進まない様に通せんぼする形でロープが張られ、立派な道標もあった。 取り付き部にはロープが垂れ下がり、尾根に乗った後は登山道が明瞭に付いている。

道標 尾根への取り付き部 道は程なく森林限界に
道標 尾根への取り付き部 道は程なく森林限界に

森林限界から道は急登になり、点線コースなので浮石も多く、足元に気をつけながら一歩一歩登っていく。 意外と稜線が近付かず、やっと日光を浴びることができたのは、7時を回ってからだった。

朝日を受けて

途中から私が先行していた。
「やっと日に照らされたよ」
と振り返れば、今まさに、びすこさんも、陽の世界に抜け出した瞬間だった。

重なり合う尾根の向こう、薬師岳のカールには、すでに朝の色合いは消えていた。
朝日を受けて

最後の登り 赤牛岳も見えてきた
最後の登り 赤牛岳も見えてきた

稜線直下にて 稜線直下にて

温泉沢の頭に出る前に、周囲はすっかり明るくなった。

ここから見る薬師岳の大きさには圧倒される。

温泉沢の頭 烏帽子方面
温泉沢の頭 烏帽子方面 早くもガスがあがっていた

「やっと着いたー!」。夜明け前から行動し続け、しかもずっと登りだったので、 稜線の向こう側が見えた時は、その一言が精一杯。ザックを投げ出して、ちょうど昨日とは反対側の尾根から、昨日歩いた尾根を眺めた。

今日は雲の湧き上がりがこの旅では一番早い。信州側は、すでに、雲が覆いかぶさろうとしていた。 でも、この尾根の天候は良く、水晶岳が間近だし、普通ならピストンしたくなるところだが、その気持ちが全く湧いてこない。 この水晶岳を迂回するコース取りが面白くて、水晶へ足を延ばすことが蛇足に思えた。もちろん時間的に厳しいのもあるのだが。

赤牛岳へ続く稜線 赤牛岳へ続く稜線

温泉沢の頭から

美しい稜線だ。数年前、雨の水晶岳からは何も見えなかった。 以来、地図で「赤牛岳」の文字を見つけては(いつになるかな?)と、想い描いていた道が目の前に延びている。

高天原山荘の赤い屋根が点に見えている。あれだけ大きく感じた高天原の湿原も箱庭のように小さい。 雲ノ平が切り立って見えているのも新鮮な風景だった。

高天原と山荘 温泉沢の頭より 雲ノ平と黒部五郎岳 温泉沢の頭より
高天原と山荘 温泉沢の頭より 雲ノ平と黒部五郎岳 温泉沢の頭より

赤牛岳へ 赤牛岳へ

まあ、そういうものなのだが、いざ歩き出すと、登山道は歩き易いとか快適とかとは違う、高山帯の岩葛道で、 「さっき見た風景に騙された!」と笑いながら行く。

CT通りに登ってきているので、たぶんこの二人なら、読売新道の下りで時間を短縮できるだろう。この稜線はゆっくり行こう。

温泉沢の頭で、高天原山荘の小屋泊の一団(水晶の方へ抜けた)に追い付かれた以降、人に会うことは稀で、この付近を歩いている登山者はほとんど居なかった。

振り返れば、水晶岳の雄姿 赤牛岳へ
振り返れば、水晶岳の雄姿 赤牛岳へ

登山道は途中から、赤みを帯びた砂地になる。空は雲がどんどん湧きあがってきた。 樹林帯の下りになるまで、天候がなんとかもってほしいと願いながら、相変わらず付かず離れずに、お互い思い思いに歩いた。

登山道は砂地になった 赤牛岳のピークが見えた 赤牛岳山頂
登山道は砂地になった 赤牛岳のピークが見えた 赤牛岳山頂

そして、この旅最後のピークになる赤牛岳に到着。

山頂は朽ちた標識と小さなケルン、湧き上がった雲が周りの名峰を隠し、余計に寂しげに感じる山頂だった。
でもそれが”赤牛岳らしい”山頂だなと思えた。ま、初めて来たのに勝手な話だが。

水晶岳への稜線 水晶岳への稜線

雲が多いが、水晶岳までは、稜線のラインがきれいに見えていた。

この写真は山頂の裏手(東側)で、いかにも張った跡のように整地された場所が2ヶ所有り。 びすこさんに聞いたところ、このあたりを幕営するポイントとしているレポが幾つかあったそうだ。雪渓を水場としているらしい。

確かに縦走を計画すると「幕営場所・水場・平ノ渡しの時刻」、この3つがポイントとなると思う。この辺りで張りたくなるな。

薬師岳方面 草原の道
薬師岳方面 こちら方面に道は無いが、この尾根を降りて「薬師見平」まで行ってみたい 富山方面 山稜のダムを越え雲が流れ落ちる

休んでいたら遠く雷鳴が聞こえた気がした。それを合図に出発した。

もっと立ち去り難い山かと思っていたが、山を離れる心持ちは晴れやかだった。 きっと、また来ることがあるんだろう。心の奥底では再訪が決まっていたのかもしれない。

さて読売新道を奥黒部ヒュッテへ下る。上から見ていた通りいきなり道が悪くなる。 東側が崩れている斜面を、ズルズルと足を沈ませながら砂礫を下る。

この尾根を下る しばらくは見晴らしがよい道
この尾根を下る しばらくは見晴らしがよい道

読売新道のイルカくん 読売新道のイルカくん

歩きやすい道になったので、のんびりと歩いた。 明日はカメラを構える絵など無いだろうし、これが見納めだなとフィルムの残枚数分を撮り尽くした。

でもこの画像はコンデジだなぁ。二刀流だと片方で撮り忘れること多し。

黒部湖 黒部湖

樹林帯間近。最後の展望としてこの絵を撮った後、一眼レフはザックにしまった。

先行していたびすこさんの姿は、ずいぶん前から見ていない。こちらも早足に変えてガツガツ下る。

さて、悪い道と噂の樹林帯に入る。道としてはよくある登山道で、特別悪いというほどでもない。 数年前に整備されて、歩き易くもなったと地図にも書かれているので、それは昔の話なのだろう。但し、地図の如く長いので気は抜けない。 段差が大きい箇所が多いので、ストックが1本でもあると便利。 樹林帯の区間を他の登山道に例えるなら、南アの聖平から易老渡へ下る道にとてもよく似ていた。

これでこの山旅の展望は終わり なんだかややこしい道が多いです 半分まで来たらしい。でもまだ会えず
これでこの山旅の展望は終わり なんだかややこしい道が多いです 半分まで来たらしい。
でもまだ会えず

読売新道の中間地点を過ぎてから、やっと前をガシガシ下るお方に追いついた。でも、ちょっと気を抜くと置いていかれるスピードなので必死に付いて行く。

下るにつれ、だんだんと蒸し暑くなってきた。高山の爽やかな風は遥か上空になってしまった。もう山旅の終わりも近いのだな。

沢音が近づいてきて、まだかまだかと思っていると、やっと建物の屋根が見えた。 さすがに長かったなあ。小屋前でじゃかじゃか出ている水を思いっきり飲む。うー生き返るー!。テーブルに落ち着いて、つまむ物を出してビールで乾杯。 「お疲れ様〜!」

もちろん歩き難い道です 奥黒部ヒュッテ 天場 東沢出合キャンプ場
もちろん歩き難い道です 奥黒部ヒュッテ 天場 東沢出合キャンプ場

天場はヒュッテから100mほど離れ、幕営スペースはかなり広く、オートキャンプ場という感じだが、もちろん沢音しか聞こえない山中の天場だ。 トイレはヒュッテ内部を使用する。但し、深夜の使用は禁止、と注意書きがあったので飲みすぎ注意。

意外と早く到着できたので、干し物などして過ごし、夕食がてらプチ宴会。 奇跡的に形を保っていたポテチやら、いろいろ取り出して、最後の山の夕は、つまみが豪勢だった。


7日目ヘ 北アルプス中部縦走