北アルプス中部縦走 2007 夏 3日目  07.08.12
針ノ木小屋       3:55
蓮華岳         5:45
北葛岳         8:25
船窪小屋       10:55
−まずはビールでまったり−
船窪小屋天場(天泊) 12:20

2:30に起きてテント出ると、頭上は天の川が流れ、きらめく星空が全天に広がっていた。 お盆の連休は流星群の時期なので、火花を散らす大きな流れ星を3つほど見た。 小屋前からは蓮華岳を登っている登山者のヘッドランプが見える。空身で登って山頂でご来光を迎えるのだろう。

夜明け前の針ノ木岳

蓮華岳へ登り始め、しばらくして針ノ木岳の方へ目を移すと、小屋も天場も目覚めたようで、冬空の星の様に光がゆらゆら動いていた。 針ノ木岳の山頂近くまで登っている光もある。山の朝は早いなぁと他人事のように思った。
夜明け前の針ノ木岳


地図で見ると分かるが、蓮華岳の山頂まで登ってしまうと、針ノ木岳の山頂部しか見えなくなってしまうので、 蓮華岳手前の2754m付近で夜明けを待つことにした。


やがて、静寂の稜線が朝日をうけて真紅に染まる。眠っていた山々が目覚める瞬間だ。音がするわけではないが、山がざわつくように感じる時だ。

朝焼けの針ノ木岳、立山連峰 2754m付近より
朝焼けの針ノ木岳・立山連峰  蓮華岳の2754m付近より

針ノ木岳が背後の立山・剱と共に赤く染まる姿は、登山者しか味わえない一瞬の光景だ。

今日の行程は悩ましい区間で、CTは船窪小屋までの5:30と短い。 それでもこの時間に行動する気持ちは、この瞬間を一度でも味わっているならば十分理解できるだろう。

北アルプスの峰々も目覚める
北アルプスの他の峰々も目覚める

蓮華岳へ

山頂には日の出に間に合っただろう数人の登山者が見える。足元のチングルマが朝日に輝く道を歩く。
蓮華岳へ

登山道の周りには、登山地図のお花マークが示す通りに、たくさんのコマクサが咲いていた。 時期的に色あせている株が多いが、全体に広がるその規模は、最盛期に再訪しようと思わせてくれる。

駒草 遠望の山は水晶岳 蓮華岳山頂
駒草 遠望の山は水晶岳 蓮華岳山頂

蓮華岳山頂からの展望がまた素晴らしい。

後立山連峰
後立山連峰 蓮華岳より。 朝もやに霞む連峰は海に浮かぶ島々のようだ。

正面には北葛岳と七倉岳 行く手には北葛岳と七倉岳
蓮華岳より

明日以降登る山々が一望できる。 →山名表示

出発前から気になっていた「蓮華の大下り」は、こうやって見るだけならば、快適そうに見えるのだが。

山頂でセルフ撮りなどしてのんびりしていたら、7,8名の天泊縦走の一団に抜かれた。 今日は時間にゆとりはあるのだが、私もそれを合図に、「蓮華の大下り」と呼ばれる北葛乗越までの標高差500mを下り始めた。

この下りの斜面にもたくさんのコマクサ。花期はとうに過ぎているが、一面に咲いている道なので楽しい。 コマクサの中には白花もあった。かがんで間近で見てみると、ピンク色の普通のコマクサとは違い、清楚で高貴な印象を受ける。

セルフ撮り 富士山も遠望 コマクサの斜面が続く 駒草の白花
セルフ撮り 富士山も遠望 コマクサの斜面が続く 駒草の白花

ミヤマムラサキ 深山紫 ミヤマムラサキ 深山紫 ムラサキ科

この花との再会は、コマクサ地帯が終わり、砂礫の道が岩稜帯になったあたり。

光岳で初めて見たのだが、そのかわいさに一瞬で好きになった花なので、思わぬところでの再会にニコニコ顔になった。

先行の天泊者一行はロープを出して岩場を降りている。ヤセ尾根もあるがそこまで危険な道ではなく、ロープワークの練習も兼ねているらしい。 あーじゃない、こーじゃないと言ってる脇を抜かさせてもらう。

大下りの最後の方は、岩壁・鎖場の連続。リーチが無い人は難儀しそうだ。やっと北葛乗越に下りてほっとする。 来た道を見上げると、よく下りれたものだと思う岩壁がそそりたっている。

北葛乗越への下り 左下の砂礫地が北葛乗越
北葛乗越への下り 浮石もあるので慎重に 左下の砂礫地が北葛乗越 蓮華方向を見る
拡大すると人が下りているのが見える

北葛乗越からは熊笹が生える道を行く。樹林の中に入ったり出たりを繰り返し、 露がついた枝葉で服が濡れるが、この天気なのでハイマツ帯の急登ですぐに乾いた。

蓮華岳 蓮華岳 北葛岳より

北葛岳山頂には8:25着。展望が良く周囲は山ばかりの静かな頂だ。

ここから見る蓮華岳は更に大きく、針ノ木岳より存在感がある。

進行方向には七倉岳の平たい山頂部に、青い屋根の船窪小屋が見えている。CT的に見ても、もう少しと思ったのだが、 意外とこの間もやっかいな道で、北葛岳と七倉岳の鞍部の前後が悪く、七倉岳の山頂に着く頃には暑い陽射しもあって、 かなり体力を消耗していた。

北葛岳山頂 七倉岳稜線の船窪小屋を望む 北葛岳より 鞍部から七倉岳への登り
北葛岳山頂 七倉岳稜線の船窪小屋を望む
北葛岳より
鞍部から七倉岳への登り

やっと着いた七倉岳の山頂で「やれやれ」という気持ちで、ザックを投げ出して座り込んだ。 この山頂も、静けさと展望は極上の部類。ぐるっと名山が囲んでいる。

小屋に着いたらすぐにビールだと決め込んで(決めてなくてもそうなのだが)、ザックを背負って歩き出す。 開放的な道を行くと空中庭園のような船窪小屋に到着。天場の受付は一番目だ。受付と共に暖かいお茶を頂いた。 ネパールティだそうで、甘めの紅茶が疲れた体に沁み入った。この気遣いがとても嬉しかった。

天場は15分ほど離れているので、まずは小屋の表でビールの時間。見渡せば、槍ヶ岳がいつの間にか展望の一部として収まっていた。 今日はガスの湧き上がりが遅く、この3日間では一番大気が安定している。

眺める山々の形が日ごとに変わり、毎日いくつかのピークを越え、はるか遠くと思っていた峰々も、いつかはその頂に立つ自分がいる。 長期縦走の醍醐味とは、そんなところだろうか。

とても穏やかな気分だ。ここは、そんなことをぼんやりと考えさせてくれる場所だった。

七倉岳山頂 船窪小屋 船窪小屋での憩い
七倉岳山頂 船窪小屋 船窪小屋での憩い

まったりしていると七倉ダム方面から天泊装備のご夫婦が登ってきた。私のビールを多少羨ましそうに見ながら、天泊の手続きを終え、そのまま天場の方へ向かっていった。 天場は狭いと聞いていたので、私もつられるようにベンチに根付いた尻を引きはがす。

山頂への分岐を通り過ぎて、七倉岳をトラバースしながら進み、梯子を降りると登山道脇に天場があった。 朽ちかけてはいるがトイレもあるし、思ったよりも広く見晴らしもある。

天場への道 前方の山は立山 天場にて
天場へのトラバース道 前方の山は立山 天場にて

さて、設営を終えたら水場の探索。先に水場から戻ってきたご夫婦は「いやぁ、すごいところにありますよ」と言うし、 水場危険の立札もあるので、水場なのに興味津々で行ってみると、これがほんとに危険な水場だった。

小さい梯子を2,3度か降りると、前方の崩壊地へ吸い込まれるように、最後にアルミの梯子が伸びていた。 水は崩壊地の真ん中から湧き出しており、手がしびれるほど冷たく、3日目にしてやっとうまい水にありつけた。 但し立札に偽りはなく、今までで一番危ない水場と感じたのは確か。落石・滑落注意、一歩足を踏み外せば助からない場所にある。

こんな立札やだなぁ この梯子の終点が水場&危険地帯 水量は十分
こんな立札やだなぁ この梯子の終点が水場&危険地帯 水量は十分

水場から下を見ると・・ トモエシオガマ 巴塩竈 夕飯のオカズは梅干とじゃこふりかけ+味噌汁
水場から下を見ると・・ トモエシオガマ 巴塩竈
ゴマノハグサ科
夕飯のオカズは梅干とじゃこふりかけ+味噌汁

到着が早かったので、荷物を広げて干しながら過ごす。ビールを飲みたいところではあるが、小屋が遠いのでさすがに面倒だ。 幸い冷たい水場のお陰で、スコッチの水割りがうまく、日が高いうちからまどろんだ。

天場には続々と登山者が到着し、夕方頃には満杯になった。中には日本海の親不知からの方もいた。 その方の話を聞いてみると、私の郷里と近い所からの遠征だそうで、話す言葉なまりが同じなのが懐かしかった。 それと同時に、お盆に墓参りもしないで山で遊んでいることに、少し後ろめたくもなってしまったのだが。

天場 天場がどんどん埋まっていく

天場は、上の小さい天場と、下の大きい天場に別れている。 今日はガラガラで終わるだろうと思っていたのだが。

次の小屋(水場)は、烏帽子小屋まで7時間30分。テント持ちは必ずここで幕となるので、遅くなると幕営場所が無くなる。 特に大型テントを張る場合は注意が必要だ。

私もいつかは日本海まで繋ぎたいと思っていたので、今回の行程のことなど興味深く聞いていると、天場の上の方にまた登山者が到着した。 (こんな時間にどこからだろう?)とよく見ると、なんとビスタ〜リさん(以降びすこさん)じゃありませんか! お盆休みはこの界隈を歩くとだけ聞いていたけれど、まさかこんな天場で出会うとはびっくり!

先月の朝日連峰でもバッタリ出会ったばかりだったので、呆けるように天場を見下ろすその姿に思わず笑ってしまった。(びすこさんは台帳を見ていたので、ここでのビックリは無しだったらしい) 話を聞くと今日は扇沢から入山だそうで、そのロングな行程にまた驚いた。互いの行程など話していると、やっぱり野口五郎は幕営禁止らしいことが判った(どうも”野口五郎”と”黒部五郎”を以前に聞き違えていたらしい。まったく)。 んん、そうかぁ、行程を考え直そうかと思っていたら、びすこさんから「高天原行かない?」とのお誘いが。

水晶小屋からそのまま水晶岳へ行く予定を、雲ノ平方面から回り込んで高天原に下り、翌日は温泉沢から登り水晶岳と赤牛岳の間に出るというコースだ。 水晶岳をむりやり迂回するような線引きになるが、水晶岳は登ったことがあるし、その行程でも日数が増えるわけでもない。 ましてや高天原温泉は、かねてより行きたかった憧れの地。この旅では考えもしなかったが、こんな予定にないことが突如出てくるのは好きな性分だ。 あまり迷わず「うん、いいね、行こうかな」と相成った。

びすこさんは相当お疲れのようで、明日の朝はゆっくり出るとのこと。私も道が道だけに遅めにしようかな、と話してそれぞれテントに入った。

最終的に天場は15張の大盛況となった。みんな物好きだなぁ。
4日目ヘ 北アルプス中部縦走